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タイ、小政党党首発言に脚光 TVでデモ批判「意思表明は選挙で」
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ラック・タイランド党のチューウィット党首(ラック・タイランド党提供) 下院総選挙を延期できるか否かで混乱を極めたタイの政局。昨年10月から始まった反政府デモは3カ月を超え、「バンコク封鎖」と銘打った主要交差点の占拠も2週間以上に渡った。タクシン派対反タクシン派の感情論に発展し、事態を一層複雑にしている。そうした中、反タクシン派であるはずの小政党の党首(下院議員)がテレビ番組で展開したデモ隊批判の主張を評価する声が広がっている。発言が賛同を得たのはなぜか。
◆感情論に冷静な対応
この小政党の党首は、ラック・タイランド党(タイを愛する党)のチューウィット党首。1月15日、インラック選挙管理内閣が事態打開のために呼びかけた選挙実施に関する会合に出席後、反政府寄りとされる民放のチャンネル9に出演した。ラック・タイランド党はかねてからインラック内閣の政策に批判的で野党色を鮮明にしていた。番組でも当然、「政府批判」をしてもらえるものとチューウィット党首に出演を願った。
チャンネル9によると、番組では女性キャスターからの質問に党首が答えるという問答形式を予定していた。ところが、冒頭から党首側が一方的に主張を展開し始めたことから、予定が大幅に狂ってしまった。チューウィット党首は、出演に先立ち出席した選挙会合で野党民主党党首のアピシット前首相とデモ隊を率いるステープ元副首相が欠席したことを取り上げ、「なぜ、2人は話し合いの席に来ないんだ」と大声で活を入れた。
これにむきになって対抗したのが、目の前にいたチャンネル9の女性キャスターだ。顔を真っ赤にしながら「それはインラック政府が汚職にまみれて信頼できないから。デモは多くの人が支援している」と切り返すと、今度はチューウィット党首が「デモといっても、ほとんどが南部から来た民主党支持者ばかりだ」と反論。反政府デモ隊が求める「人民会議」の設置についても、「いったい、誰がそれを決めるのだ」と一蹴した。
女性キャスターも黙ってはいない。「人民会議で政治改革を進めれば汚職がなくなる」「デモ以外にどのような方法があるのか」などと切り返す。だが、チューウィット党首は余裕綽々(しゃくしゃく)の様子で「過去には民主党政権もあったし、ステープ(元副首相)は35年以上も議員をしながら何も解決することができなかった。(政治的意思表明は)選挙で行うべきだ」と相手にしなかった。
極め付きは、15分ほど“議論”が続いた最後だ。形勢不利となった女性キャスターが「選挙をすれば(与党タイ貢献党に)負けてしまう」とつい本音をこぼすと、チューウィット党首は少し同情した様子で、「それが選挙、民主主義というものだ。民主党が評価されていない結果だ」と静かに語り、いなしてみせた。
◆異色の経歴
テレビで一部始終を見ていたタイの有権者からは、賛否二分する意見が番組に寄せられた。ラムカムヘン大学のブンさんは「チューウィット党首は政府からお金をもらったのでは」と憤慨したという。一方、それまで投票を棄権しようと思っていたという会計事務所勤務のノーイさんは「政治家が初めて正しいことを言うのを聞いた」として、選挙ではラック・タイランド党に投票することを決めた。ラック・タイランド党広報の話では、賛同意見はその後も党に寄せられているといい、中には「男を上げた」という意見もある。
チューウィット党首は一風変わった経歴で知られる。名門タマサート大学卒業後、アメリカに留学。帰国後はバンコクなどで風俗事業を展開し、一時はタイの「風俗王」と呼ばれた人物だ。2005年に政界進出、反タクシン派とみられている。だが、小政党であるため、有権者が肉声を聞く機会はあまりなかった。タイの政治をめぐっては、タクシン元首相をめぐる対立以降、両派が互いに有利な発言を繰り返して相手を誹謗(ひぼう)中傷するケースが多く、理性的論理的な議論は少ない。そうした中での風俗業界出身の小政党党首による“真っ向発言”。これこそ、政争に飽き飽きしたタイの有権者が求めていたものなのかもしれない。(在バンコク・ジャーナリスト 小堀晋一)