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【飛び立つミャンマー】民主化3年で軍政時代に逆戻り懸念 政府が報道規制強化
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ミャンマー語のほか英語の新聞や雑誌も並ぶニューススタンド=ヤンゴン 一時の熱狂は収まったとはいえ、アジア最後のフロンティアといわれるミャンマーに対する外国企業の関心は高い。その一方で、民主化から3年弱が経過した今、外国メディアを含む報道機関に対する規制が強化されるなどしており、軍政時代に逆戻りするのではと懸念する声が上がっている。
◆取材ビザに制限
テイン・セイン大統領率いる新政権発足後、メディアに対する検閲が廃止され、ミャンマーでは軍政時代とは様変わりし、政府や政商を批判する記事が一気に増えた。
こうしたなか、ミャンマー政府は昨年から外国メディアに対する取材ビザの発給を徐々に制限。さらに、ミャンマー情報省は今月に入り、取材ビザの有効期間を短縮すると発表した。現地の支局に駐在する記者には最大で半年間、それ以外の記者には最大1カ月にするというものだ。
ビザの有効期間を短縮した理由については明らかにしていないが、同省スポークスマンは「多くの外国人記者が、支局や外国人記者クラブに登録しないまま、長期滞在しているため」と説明している。
さらに実際は、現地支局を持つメディアであっても、情報省がいう半年どころか、1カ月の取材ビザしか取得できない例が出ている。
反軍政メディアの「ビルマ民主の声」(DVB)は、新政権になってヤンゴン支局開設を認められたが、最近、支局長がビザ更新を申請したところ、28日間有効の取材ビザしか得られなかったという。
現地に支局を持たないメディアの場合は、さらに厳しくなっている。以前はセミナーなどの取材で入国申請した場合、1カ月有効の取材ビザと取材証が出たが、今後はそれも厳しくなるという。
今年、ミャンマーは東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議の議長国だが、一連の会議を取材する場合でも、事前に決められた会議の開催期間に前後2日間を加えた日数に限り、滞在を認めるという。
かつて、軍政時代に開かれた国軍記念日を取材した際は、記念パレード当日と前後3日間の取材ビザしか出なかったが、今回の措置は当時を彷彿(ほうふつ)させる。
◆保守派のいらだち
ミャンマー政府の決定の背景には、保守派を中心に最近の報道に対するいらだちがあるとみられる。昨年には、最高実力者だったタン・シュエ氏を批判する記事を掲載した週刊誌の編集部に、タン・シュエ氏の孫が仲間と乱入、パソコンなどを持ち去る事件があったという。
孫自身は関与を否定したが、同誌の発行責任者が別の週刊誌のインタビューに応じ、圧力には負けないと発言したことで、いっそう人気を博すこととなった。
さらに、ミャンマー政府が神経をとがらせるのが、同国が不法滞在者としているロヒンギャ族をめぐる報道だ。先月、ロヒンギャ族虐殺事件があったとする記事を配信したAP通信などに対し、情報省は支局長を呼びつけ、事実と異なると厳重に警告した。
今月には軍政がミャンマー中部で化学兵器工場を建設していたと報じた地元メディアの編集幹部と記者4人を逮捕している。
もともと、ミャンマーの人々は噂話が大好きなだけに、民主化後に急増したメディアの中には、噂話レベルの記事も多い。しかし、だからといって政府がメディアに対する圧力を強めれば、民主化に逆行するものとみられ、外国投資にも影響が出るのは避けられない。
2015年の総選挙が迫るにつれて、政府批判の記事はさらに増えるだろうが、そうした批判に耐え、民主化を進めることが現在のミャンマー政府・与党への支持を取り付けることにつながるはずだ。(ヤンゴン 宮野弘之)