SankeiBiz for mobile

中小機構「国際化支援アドバイス」の利用を

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

中小機構「国際化支援アドバイス」の利用を

更新

新保章氏  □中小企業の海外展開、幅広くサポート

 中小企業基盤整備機構は、1981年から中小企業の海外展開のための相談窓口「国際化支援アドバイス」を開設し海外展開を支援してきた。ここ数年、中小企業の海外展開の活発化をうけて、さまざまな事業を開始して支援体制の強化を図っている。中小機構のサポート体制を販路支援部の新保章海外展開支援担当に聞いた。

                   ◇

 □中小企業基盤整備機構 販路支援部海外展開支援担当・新保章氏に聞く

 --中小企業の海外進出への関心は

 「ここ数年、新しい事業を立ち上げ、中小企業の海外展開を支援しているが、いずれの事業に対しても企業の関心は非常に高い。また、全国の地域本部で受けることのできる国際化支援アドバイスの相談窓口には、2012年度で2800件を超える相談が寄せられた。国際取引に関する相談の割合が増えており、国内市場が先細りする中で、海外に新たな売り先を求める企業も多い。海外進出を考えている企業の中には、ノウハウがなく不安を抱える企業も少なくない。国際化支援アドバイスでは、海外ビジネスに精通した多くの専門家を抱え、相談者の経営状況などを踏まえて、企業に必要な情報提供、アドバイスを行っている。必要に応じて、他の支援制度も紹介している」

 ■展示会への出展

 --展示会出展をサポートしている

 「日本貿易振興機構(JETRO)などと連携して、海外の展示会に出展したい中小企業を対象に事前準備から、出展、帰国後のフォローまでを一貫して支援している。13年度は、ニューヨークのギフト関連の国際展示会やタイで開催された、工作機械・金属加工技術の国際展示会など7つの展示会で出展をサポートした。中小機構では、ブースで配布するパンフレットなどの翻訳費用の一部を負担したり、展示会に合わせた展示方法、契約や輸出の実務などを、無料でアドバイスしている。知財関係でもトラブルが起きないように、しっかりとした事前準備を呼び掛けている」

 --フィージビリティ・スタディー(F/S)支援制度は手厚い

 「企業の中には、海外での事業展開が採算に合うかどうかのF/S(事業化可能性調査)を、十分に行わずに進出を決めてしまうケースも見受けられる。結果として海外での事業展開がうまくいかずに、その事業を諦めざるを得ない場合がある。F/S支援事業では海外現地に精通した専門家が国内での事前準備段から、現地への同行調査、調査後のフォローまでを支援し、海外展開計画を企業と一緒に検証する。13年度は128案件の支援を行い、14年度は180件を超える案件を支援している。この制度を利用する多くの企業が海外での新しい市場の開拓を目的として、製造拠点や販売拠点の設立、新たな取引先の開拓などを目指している。海外現地では、現地のインフラ状況の確認、労働力確保から許認可、需要動向など、多岐にわたる内容を調査する。渡航やパンフレット翻訳費用などの経費の一部は機構が負担する」

 --実際にF/Sを利用した企業は

 「ユニークなところでは、沖縄発のローカルヒーロー「琉神マブヤー」を企画するマブイストーン(沖縄県豊見城市)。マレーシアでの事業展開のためにF/S支援事業を活用した。現地でのテレビ放映、キャラクターショー、グッズ販売の可能性に関し調査を行ったほか、法律上の制限やムスリム市場に対応するため文化や風習などの情報収集、共同制作パートナー候補企業との交渉も行った。先月から現地版マブヤー「琉神ジュワラー」がマレーシアの地上波で放映されている」

 ■Webサイトの活用も

 --今後の展開は

 「支援体制をさらに拡充する予定だ。今月から、Webサイトを活用して海外からの受注獲得につなげるための支援制度を始め、公募している。海外向けページの見せ方や物流、決済方法などをパッケージ化し、新たな海外販路の構築や海外販売の強化を支援していく。また人材育成としては、中小企業大学校において、海外展開を進める企業の管理者や実務者向けの実践的な研修を実施している。中小企業にとって海外展開のリスクは決して小さな物ではない。やみくもに、海外展開を考えるのではなく、海外で事業展開をする上での自社の特徴・強みを把握し、海外展開を行う際のリスクも踏まえ、十分な準備をした上で判断してほしい。海外展開について、気軽に相談先できる先として、ぜひ、中小機構を使っていただきたい。中小機構では、国内向けの支援制度も充実しており、経営に関するさまざまな相談にも乗っている。国内の経営相談から、海外にと言ったステップも踏める。中小機構の相談窓口の敷居は高くない。海外展開を検討しているならば、まず手始めに国際化支援アドバイスを利用してほしい」

                   ◇

 □中小機構の国際化支援事業「タイビジネス商談会&交流会」

 ■国内にいながら海外企業経営者とのマッチング機会を創出!

 中小機構は12年度から海外進出支援事業の一環として、日本企業と商談を希望する海外の経営者を招いた商談会を開催している。これまでにベトナム、ミャンマー、インドネシアの企業トップ100人以上が来日した。1月28日には、東京・大手町の経団連会館で「タイビジネス商談会&交流会」が開催され、日本企業70社、タイ企業22社が参加した。

 商談会に先立ち行われたセミナーでは、タナティップ駐日タイ大使や、タイ工業省のバヌワット裾野産業振興部部長らが講演した。タナティップ大使は「タイ企業の98%が中小企業であり、国全体の80%が中小企業で働いている。中小企業はGDP(国内総生産)の37%を占めるなど、経済成長の歯車になっている」とタイにおける中小企業の重要性を強調する一方、「タイの中小企業は、投資チャンス・技術革新の拡大能力・海外進出への情報収集力が足りない」と課題を挙げた。そのうえで、日本の中小企業が重要なパートナーであり「互いに連携することでこれらの課題を克服したい」とタイ市場への進出を呼び掛けた。

 中小機構の高田坦史理事長は「昨年開催した4カ国の企業との商談会では、合弁会社の設立、販売代理店契約など案件が成約した。今後、タイはASEANの中心として発展が期待でき、日本の中小企業にとってビジネスチャンスがある。この商談会が日本とタイの経済交流や企業間連携の強化の一助になることを期待したい」とあいさつした。

 商談会では両国の企業が、合弁会社設立や販路開拓など、さまざまな事業形態について熱の入った商談を繰り広げた。参加したタイ企業は「高いレベルの技術をもつ日本企業との技術提携や合弁会社の設立を目指している。今回の商談でぜひともパートナーを見つけたい」と期待を込めていた。

 3月中旬には、ASEAN10カ国の経営者を招いての商談会が東京と大阪で開催される。

ランキング