SankeiBiz for mobile

マンダレー開発で日本反攻へ 国際空港改修、中国先行に一矢

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

マンダレー開発で日本反攻へ 国際空港改修、中国先行に一矢

更新

建設が進むミンガラー・マンダレー・プロジェクトの現場=マンダレー市内(宮野弘之撮影) 【飛び立つミャンマー】

 新政権発足後、まもなく3年を迎えるミャンマー。不動産などへの投資熱はやや落ち着いたものの、インフラ整備などを中心とした各国からの投資は着実に進行している。これまで最大都市ヤンゴン周辺に集中していたが、他の都市へも拡大しつつある。なかでも第2の都市マンダレーでは、マンダレー国際空港の改修などを三菱商事をはじめとする日本企業が手掛けることになった。ただ、マンダレーでは中国が先行しているだけに、日本が今後、いかにして巻き返せるかが焦点だ。

 40年に人口400万人

 マンダレーの人口は約120万人(2011年)、20年には240万人、40年には400万人が見込まれる。ビルマ最後の王朝があった古都で、ミャンマーのほぼ中心部に当たる。碁盤の目のように縦横に道路が走り、市の北側には堀に囲まれた旧王宮がある。京都を思わせる形状だ。

 「ここに日本人が来たのは、あなたが初めてです。オフィスやテナントは、ほとんど契約済みですが、コンドミニアム(高級マンション)などはまだ間に合います」

 旧王宮から南へ車で約15分。マンダレー大学の南側に広がる地域では「ミンガラー・マンダレー・プロジェクト」と呼ばれる都市開発が進む。現地のインフォメーションセンターで、日本から来たと言うと、係員は少し驚いたように話してくれた。

 同プロジェクトは、マンダレー都市開発協議会(MCDC)が地元デベロッパー2社と進める都市開発で、マンダレーの中心ビジネス地区(CBD)に当たる。

 12年秋にスタートした第1期工事は約20ヘクタールの土地に外資系ホテルやオフィス、ショッピングモール、銀行などを建設。2期ではコンドミニアムやサービスアパートなどを建設する。すでに1期分はほぼ売り切れ、4月からコンドミニアムなどの販売を始めるという。オフィスや店舗部分の買い手を聞くと、「ほとんどが中国企業」だ。

 ただ、地域はマンダレー南部とはいえ、国際空港までは約40キロ、車でも1時間弱はかかる。交通の便について尋ねると、担当者は、西側に隣接する国内線専用のチャンミャサージ空港の再活用が検討されていると話した。同空港は2000メートル滑走路があるだけで、現在はミャンマー航空の短距離国内線が離着陸しているが、拡張も検討している。

 さらに、マンダレー市街から西へ約60キロのミョータには、工業団地の建設が進む。第1期は2000エーカー(約810ヘクタール)、25年までにさらに8353エーカー(3380ヘクタール)を開発する計画だ。これは、ヤンゴンのティラワ経済特区(約2400ヘクタール)を大きく上回る規模だ。

 ◆30年間の運営事業

 こうしたなか、マンダレーでは日本の存在感は薄い。1990年代半ば、マンダレーの都市開発計画(スター・ルビー・プロジェクト)作りを千代田化工建設が行った。MCDCは「現在の都市開発は、千代田化工建設の計画を基に進められている」というが、現在進行中の開発には日本企業がほとんど絡んでいないのが実態だ。

 今回、三菱商事とJALUX(ジャルックス)がマンダレー国際空港の補修・改善、さらに30年間の運営事業を行うことになったが「上下水道整備など、マンダレーでの支援はこれから検討する」(国際協力機構=JICA)という。

                   ◇

 ■交通の要衝、マンダレー ガスパイプラインで中国に権益

 マンダレー国際空港はマンダレー中心部から南へ約40キロ。マンダレーからネピドー、ヤンゴンを結ぶ高速道路脇にある。市中心部からも車で約1時間かかり、畑が広がるだけで何もない場所だ。その近くに突然、現れるのが東南アジアガスパイプラインカンパニー(SEAGP)だ。

 ◆エネルギー改善期待

 同社は中国とミャンマーの合弁企業で、ミャンマー西部のラカイン州チャオピューの港から中国国境まで約800キロに及ぶ「シュエ・ガス・パイプライン」の建設・管理を行う。昨年7月、マンダレーで行われたガス開通記念式典には、ニャン・トゥン副大統領も出席し、「ガスパイプラインによって、中国のエネルギー不足を助けることができる。これは相互利益につながる」と中国の投資によるパイプライン建設を高く評価した。

 「以前、中国人労働者は旧王宮近くに集中していたが、昨年から、みんなここに移ってきた」と話すのは、ガイドを務めてくれた地元旅行業を営むコ・ジー氏だ。中国・ミャンマー両国政府は、パイプラインができれば、ミャンマーのエネルギー事情も改善されるとしていたが、「停電も相変わらずで、今のところ何の恩恵もない」(同氏)と冷ややかだ。

 マンダレーは古都とはいえ、旧王宮の保存も十分ではなく、ホテルも整っていない。その一方でヤンゴンと異なり、マンダレーにはバイク規制がない。日本製の中古自動車もヤンゴンで買うよりわずかに高いだけだ。その結果、あふれるバイクと自動車で、朝夕の交通渋滞はヤンゴン並みだ。

 それでもマンダレーに注目が集まるのは、ミャンマーから中国、タイ、インドを結ぶ交通の要衝に当たるためだ。ヤンゴンへは700キロ、ネピドーには400キロ。東には天然資源も豊富なシャン州が控える。既にマンダレー国際空港にはタイ・バンコクや中国・昆明、さらにシンガポールからの定期便も飛んでいる。最近は混雑するヤンゴンを嫌い、マンダレーからミャンマーに直接入国する観光客なども多い。

 ◆労働力確保が課題

 マンダレーと同様に、ヤンゴンを離れた場所への進出を考える企業も出始めている。日産自動車がマレーシアのタンチョン・モーターとともに工場進出を決めたバゴーの工業団地は、ヤンゴンの北東約80キロにある。既に日系の縫製会社3社の工場が稼働しており、さらに欧州のビール大手カールスバーグの工場建設が真っ最中だ。

 バゴー地域全体では612万人の人口を抱えているが、これまでは地元に大きな産業がなく、多くがヤンゴンまで働きに出かけていた。このため、バゴー地域政府は、工業団地への企業誘致に力を入れている。

 日本貿易振興機構(JETRO)によると、地域政府から土地をリースすると、当初10年間は1平方メートル当たり年2.5ドル(約256円)、次の10年間は同3ドル、その後10年が3.5ドルという。

 現地は外資向け地域、国内企業向け地域、農業・緑化地域などに分かれているが、工場用地はほぼ売却済みという。もっとも、現地で聞くと「地元企業が買って、それを外資に貸すケースが多い」と答えた。

 バゴーからヤンゴンまでの道路は良く整備されており、渋滞がなければ2時間もかからない。さらにバゴーからの鉄道路線の整備を進めれば、大量輸送も可能だ。

 ただ、バゴー地域全体の人口は多いが、工業団地周辺の人口は少なく、「労働者を大量に集めるのは難しい」(日系企業幹部)という。既にヤンゴンに通勤している労働者を、それより安い給料で雇うのは容易ではない。さらに、同工業団地に隣接する土地に計画されているハンタワディ国際空港の建設がまったく進んでいない。

 現在、同空港建設の交渉権は、韓国企業から日本企業とシンガポール企業のグループに移ったが、1000億円ともされる建設費のめどが立たない。「シンガポール企業が入っているのに政府開発援助(ODA)など使えない」(日本政府筋)からだ。

 マンダレーもバゴーも、ヤンゴン以上に多くの課題を抱えているようだ。(ヤンゴン 宮野弘之)

ランキング