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ニトリや吉野家は値上げ転換 脱デフレ戦略…企業の手探り続く
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「(価格を)下げすぎたので元に戻したい。4万9000円のソファなら5万9000円で値付けするというようなことだ」
家具量販大手ニトリの創業者、似鳥昭雄氏(ニトリホールディングス社長)は、2014年2月期連結決算の説明会でこう話し、従来の低価格路線から転換する意向を表明した。
同社は昨年から商品価格の見直しに着手した。中心はソファとベッドで、素材や機能性を高めるとともに、従来品よりもやや高い価格帯も拡充する。
似鳥社長は「増税後も物価は1%程度上昇するだろう。税金が上がっても、消費者は必要な物を買わないわけにはいかない」と指摘した。
同様に牛丼の吉野家は280円だった並盛りを300円に値上げした。安部修仁社長は「コストは増加し、物価もインフレ傾向にある。価格以上の価値の提案が必要だ」
デフレ下で低価格競争の先陣を切った牛丼業界だが、安部社長は「2~3カ月は客数減に伴い売り上げも減少するだろうが、その後は元に戻る」と述べ、デフレの出口は近いとみる。
デフレ脱却へ向けて、1年前に異次元緩和に踏み出した日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は3月11日の記者会見で「長らく低位にあった予想物価上昇率は徐々に上がってきている」と、デフレ脱却へ自信を示した。
日銀が掲げる2%の物価上昇率目標には、消費税増税の影響を含めていない。それでも、今後もモノの値段が上がると消費者が想定すれば、『値段が上がる前に買っておく』という心理が働き、消費が刺激されてモノが売れるようになるというデフレ脱却の筋書きを描く。
ただ、政府は「少なくとも消費税引き上げ後、一定期間の経済状況は見極めないといけない」(内閣府幹部)と慎重な姿勢を崩していない。
政府は01年3月の月例経済報告で、日本経済が「緩やかなデフレにある」と公式に認めた。その後の景気回復を受け、06年7月にいったんデフレの表記をなくしたが、リーマン・ショック後の景気後退で09年11月に「デフレ状態」との表現を復活した。この経験から政府はデフレ脱却の宣言に慎重だ。
経済政策の司令塔である甘利明経済再生担当相は2月19日の会見で「今日時点でデフレ状態ではないが、デフレ脱却を宣言するには多少のことがあっても元に戻らないことが必要だ」と表明した。市場では「(デフレ脱却は)早くて3年後」(農林中金総合研究所の南武志主席研究員)と慎重な見方が根強くある。
一方で「増税の影響を差し引いても、来年度以降、1%前後の物価上昇は続く。再びデフレに陥る可能性は小さい」と楽観的な観測もある。
デフレの出口は見えにくいが、消費税増税を機に戦略転換に打って出る企業は少なくない。
ニトリや吉野家が値上げする一方で、ドンキホーテホールディングスの高橋光夫専務は「デフレ脱却でぜいたく品は売れるだろうが、生活の中で消費し続けるものは(割安な品が)支持される」と強調。食品や消耗品を中心に低価格品を拡充し、新しい顧客層の取り込みを図る。
また、ファンケルの宮島和美社長は「ニーズをくみ取って高付加価値の商品やサービスを提供してきた」とし、増税後も従来品は本体価格を据え置く。新製品は付加価値の高い商品やサービスに注力する考えだ。
一方ロート製薬は、消費者ニーズの細分化を視野に、目薬だけでも約500円の安価な商品から約1400円の高付加価値商品までを取りそろえる。デフレ脱却へ、当面、企業の手探りは続きそうだ。