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【寄稿】邱文達・衛生福利部長 台湾の医療技術評価、低コストで効果
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2005年の世界保健機関(WHO)の年次総会(WHA)で、台湾は加盟国・地域に健康基金の設立を呼びかけた。これは、すべての人々に必要な医療サービスとケアを保障するのと同時に、過大な財政負担を避けながら、すべての人々が健康でいられることを目指すものである。
07年のWHAでは「医療技術」についての定義づけが行われている。ここでの「医療技術」とは、健康問題の解決と生活の質(QOL)向上のための系統だった組織、知識と技術-医療設備や医薬品、ワクチン、医療プロセスなど-のすべてを指すとされた。保健分野の機関が健康に関わるサービスを人々に行うとき、「効果的である」「経済的に負担可能である」という2つのポイントを両立させなければならない。
医療効果とコスト抑制を両立させるため、いくつかの先進国では1980年代から医療技術評価(HTA)、すなわち医療効果、コスト効果、予算への影響の分析などを行う手法を採用し、併せて倫理、法律、社会面の影響も考慮され、政府の保健衛生部門が関連政策を決定する際の助けとなってきた。
◆英モデルなどは高額
現在、世界各国・地域ではHTAを推進する際、経験モデルとして、英国の国立医療技術評価機構(NICE)、カナダ医薬品・医療技術庁(CADTH)、オーストラリアの医薬品給付諮問委員会(PBAC)が最もよく取り上げられる。しかしながら、これら3つのHTA機関は、毎年かかる経費が非常に高額で、発展途上国にとって負担が重すぎるといえる。
台湾は95年から(日本の国民皆保険制度にあたる)全民健康保険を実施。現在99.9%がこの保険のサービスを享受しており、すべての人の健康を守るという理想を具体的に実践している。しかも医療支出は国内総生産(GDP)の6.6%にすぎない。台湾の全民健康保険は、一般民衆のほか、刑務所の受刑者もカバーしており、適用の範囲は漢方医学、専門科医師、成人健康診断などにも及んでいる。
高額な医療新技術が次々と登場していることから、台湾の全民健康保険では、医療新技術提供の際にサービスの質を維持しながら財政浪費を避けるため、2007年から健康保険支給事業にHTAを導入。新薬、特殊材料、医療サービスのイノベーションについての政策決定、給付を行う際の助けとしている。
台湾は13年に、衛生福利部(厚生労働省に相当)から独立した公正なHTA専門機関である「国家医療技術評価センター」(NIHTA)を設立した。NIHTA開設後、医療衛生関係者、医療関連メーカー、関係各省庁、消費者代表などの29人で構成される「全民健康保険給付項目および支給標準共同制定会議」(PBRS)が組織され、従来の健康保険薬事グループ(DBC)に代わって、健康保険の適用範囲と給付に関する政策決定を行うようになった。
◆発展途上国の参考に
カナダ、英国、オーストラリアなどのHTA機関の経験を踏まえて開設された台湾のNIHTAは、4つの特色を備えている。
第1に、品質効率と顧客満足を重視していることが挙げられる。開設から1年余りがたち、それぞれ利害関係にある、衛生福利部の中央健康保険署(局)、医療関係メーカー、医療サービス提供者、被保険者のいずれからも高い評価を得ている。
第2に、評価費用とコストの範囲をあらかじめ設定し、低いコストで医療技術評価を行っていることである。諸外国のHTAよりも格安でありながらも効果的であるという成果を挙げている。
第3に、台湾のNIHTAは全住民をカバーする健康保険制度の下で設置された公正な第三者機関であり、中央健康保険署およびその他機関の新薬適用評価などのサポートを目的としていること。このため評価結果は政策決定者にとって参考価値が極めて高いものとなっている。
第4に、長年にわたる中央健康保険署との協力を通じて構築された相互信頼メカニズムにより、NIHTAのHTA評価報告は、前述のDBCやPBRSが薬価審議など政策決定を行う際、重要な参考資料となっている。
先進国のHTA機関と比べて台湾のNIHTAは運営コストが低く、しかも数多くの恩恵と成果を得ていることから、低コストかつ効果あるモデルといえる。発展途上国の参考にもなるよう、その経験を分かち合いたい。
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【プロフィル】邱文達
1975年、台湾・中山医学院(現・中山医学大)医学部卒。米ピッツバーグ大流行病学博士、日本大医学部神経学博士。台北市立萬芳医院院長、台北医学大校長などを経て2011~13年、行政院衛生署長。13年から衛生署が昇格して誕生した衛生福利部部長(日本の厚生労働相に相当)。