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海外情勢
6年ぶりのウォン高、韓国企業に打撃 1ドル=1000ウォン接近の危険水域、日本勢には追い風に
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外国為替市場で韓国ウォンが買われ、対ドルで約6年ぶりの高値水準が続いている。ウォン高は、輸出産業が支える韓国経済にとって打撃だ。自動車や家電でライバルとなる日本メーカーには追い風となりそうだが、「韓国メーカーが一段と海外投資を進めることで、円高時代に海外で稼ぐ体質に転換した日系企業と再び激しい競争になる」との見方も浮上している。
ウォンは4月下旬、2008年8月以来となる1ドル=1030ウォン台に上昇し、5月中旬から1020ウォン台に定着している。4月上旬までは、韓国企業の多くが採算ラインとみる1050ウォン台を維持していたが、このラインを割ると、一気に1020ウォン台に入った。
韓国当局は為替介入によってウォンを一定水準に誘導してきた。ただ、米財務省が4月中旬、議会に提出した為替報告書などで韓国の為替介入に対する牽制(けんせい)姿勢を強めており、今後は「1ドル=1000ウォンを割る水準まで次第にウォン高が進む」(為替アナリスト)との予測も出ている。
日韓メーカーは海外で、自動車や電機などで激しい競争を繰り広げてきた。ウォン高は韓国メーカーには痛手で、輸出産業の利益を押し下げるのは間違いない。ただ、韓国メーカーも工場の海外移転を進めており、ウォン高がすぐに日本メーカーに有利にはたらくような分野は限られているとの見方が根強い。
ウォン高が長期にわたり定着すれば、韓国企業は一段と海外投資を促すとみられる。伊藤忠経済研究所の三輪裕範所長は「韓国企業は経営判断が速く、ウォン高を機に成長性の高い東南アジアへの投資を強化する」と予測。「中長期的には、むしろ日本企業と競合する場面が増える可能性が高い」と指摘する。