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【飛び立つミャンマー】労組代表、環境の改善に全力 日本企業の進出拡大期待
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インタビューに答えるミャンマー労働組合連盟のメンバー。左からミン・ミン・ラット氏、ウイン・ゾウ氏、キン・ニラー・ソウさん=東京都千代田区の国際労働財団(宮野弘之撮影) 政治・経済の民主化が進むミャンマーで、軍政下では厳しく規制されてきた労働組合の活動が活発化している。このほど来日したミャンマー労働組合連盟(FTUM)のメンバーによると、労働条件の改善を求めるストなどが増える一方で、労使対決型ではなく日本のような協調型を理想としているという。労働者側からも日本企業の進出拡大への期待は高い。
◆結成2年で変化
今回の訪日は、連合が設立した非政府組織(NGO)で労働分野での国際協力や社会開発事業などを行う国際労働財団(JILAF)の招きによるもの。メンバー10人のうち、FTUM専従で組織担当のミン・ミン・ラット氏ら3人が離日を前に本紙のインタビューに応じた。
ミャンマーの軍政下では、組合活動は禁止され、活動家の多くはタイに亡命していた。しかし、テイン・セイン政権発足後の2011年10月に労働組合組織法が制定されたことを受け、12年にFTUMが設立された。
ミン・ミン・ラット氏によると、ミャンマーの労働組合は6月末の段階で1099を数える。FTUMは600組合、約3万680人が加盟する最大組織だ。
インタビューでミン・ミン・ラット氏は「ミャンマー政府はFTUMをまだ公式には認めていないが、認識はしている。公式の対話がないだけで、工場でストがあると、何とかしてくれとFTUMに政府から要請が来る」と述べるとともに、現在はヤンゴンに集中している組織を全国に拡大し、近い将来、ナショナルセンター(中央労働団体)を目指す方針を示した。
また、韓国系衣料品工場の労組委員長、キン・ニラー・ソウさんは「労働組合法ができる前は、女性が過剰労働を強いられ、断れば解雇される状況だったが今は違う。今年4月に15日間のストを行ったところ経営者側も話し合いに応じた。相手が外国企業でも労働組合なら交渉できることを実感した」と語り、組合運動の成果に自信をにじませた。
一方、中国系の段ボール工場の労組委員長を務めるウイン・ゾウ氏は「1959年から労働者を保護する法律はあったが、有名無実だった。団結権もなく事業主が好きなように酷使していた。しかし、労働組合ができて状況は改善した。双方が法律に基づいて協議することで、労働争議も減らすことが可能になった」などと語り、労働組合の結成が認められてからわずか2年で、大きな変化が見えていることを強調した。
◆経営者側と模索
ミャンマーでは現在、国際労働組合総連合(ITUC)のヤンゴン事務所が置かれ、国際労働機関(ILO)理事を務めた中嶋滋所長(連合参与)の下、FTUMとの連携を図っている。ITUCのなかでも出身組合によって企業側との対決姿勢を前面にすべきだとする声は多いが、FTUMでは、日本型の労使協調路線を取るべきだという意見が多いという。
ミン・ミン・ラット氏は「将来的には、FTUMがナショナルセンターとしての形を整え、経営者側の団体と話し合う場を作ることで、労働争議など過激な手段によらずに、待遇改善などの成果をあげていくようにしたい」と述べた。
また、ウイン・ゾウ氏は「もっと日本企業に進出をしてほしい。日本企業の経営者が皆いい人とはかぎらないといわれるが、(労使協調の)日本式経営をする人が来れば、われわれも交渉がしやすい」と期待をにじませた。
今回、ミャンマー代表を招聘(しょうへい)した国際労働財団の團野久茂専務理事は「ミャンマーは、多国籍企業が資金と技術を持ち込んで、安価な労働力を使おうとして進出した段階。彼らは落ち着いて活動できなければ引き揚げてしまう。双方にとって建設的な労働運動を考えるのがベストであり、欧州のような力には力でというやり方は避けるべきだろう」と指摘。連合としてもFTUMの姿勢を支持していく考えを示した。
ミャンマーは経済改革と民主化から3年余り。労働組合が認められてから2年弱だが、労働者の意識は確実かつ急速に変わっている。
進出にあたっては、こうした労使関係でもミャンマーは遅れているという認識を変える必要がありそうだ。(編集委員 宮野弘之)