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【ビジネスアイコラム】消費税率10%への引き上げは鬼門
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先日、北陸に出張し地元の商工団体幹部と会談したが、消費税増税の影響を懸念していたのが印象的だった。地方経済にとって増税は最大の関心事で、2015年10月から10%に引き上げられることに否定的な意見も聞かれたほどだ。アベノミクス効果により、デフレ脱却が現実味を帯びつつあるが、その一方で、物価上昇や増税に伴う「家計の負担」がじわりと広がっているのが気にかかる。
総務省が7月25日に発表した6月の全国消費者物価指数は、総合指数が前年同月比3.6%の上昇。生鮮食料品を除いた指数でも前年同月比3.3%の上昇となった。一方、同省が6月27日に発表した5月の家計調査(2人以上の世帯)では、消費支出は1世帯当たり27万1411円で、前年同月比実質で8.0%減少(前月比季節調整値実質3.1%減少)、名目で3.9%減少となった。このうち勤労者世帯の実収入は、前年同月比実質4.6%減少、名目0.4%減少となった。
デフレ脱却へ向け物価が上昇する一方、消費支出は4月の前年同月比実質4.6%減少から5月は8%減少に落ち込み幅が拡大。6月は3.0%減と若干持ち直したが、消費税増税や円安による輸入物価上昇やエネルギー価格の上昇が家計を圧迫しつつある様がみてとれる。
一方、賃金については、安倍首相が大企業に賃上げ圧力をかけたことも功を奏して、今夏のボーナスは大企業を中心に大幅アップとの報道も相次ぐ。
厚生労働省が7月1日に発表した5月の勤労統計調査(速報)によれば、現金給与総額の前年同月比は、0.8%増と3カ月連続で増加となるなど、賃金は順調に上昇基調にあることがうかがえる。しかし、肝心な実質賃金指数(現金給与総額)の前年同月比は3.6%減となっている。賃金は伸びつつあるが、物価上昇のスピードに追い付いていない。
こうした家計の圧迫は日銀が7月3日に発表した6月の「生活意識に関するアンケート調査」にも如実に表れている。
景気が「よくなった」とする回答から「悪くなった」とする回答を引いた景況感DIが、前回の3月期調査に比べて3.6ポイント悪化しマイナス10.0となった。前回調査で3期ぶりに改善した景況感は、再び悪化に転じている。
一方、法人税を減税と合わせ、その財源を確保するために中小企業の課税強化が俎上(そじょう)に載っていることも気にかかる。年間所得が800万円以下の中小企業の法人税は15%の軽減税率となっているが、これが20%台半ばまで引き上げられるのではないかとみられている。
さらに、資本金1億円以上が対象になっている外形標準課税を中小企業まで拡大する案が浮上している。
中小企業の7割は赤字で法人税を納めていない。ここに税の網をかけようというのが外形標準課税だが、外形標準課税は、企業の「付加価値」に課税する仕組みで、従業員の給与も課税対象になる。賃金を引き下げたり、極端な場合、従業員をリストラして、その分の仕事を外注したほうが税的には有利になりかねない。賃上げを働きかけている安倍政権としては正反対の結果を招きかねないリスクがある。
安倍政権は「ローカル・アベノミクス」を掲げ、地方へのアベノミクス効果の波及を目指しているが、まだ緒に就いたばかり。2015年10月からの消費税率10%への引き上げは鬼門となりかねない。(ジャーナリスト 森岡英樹)