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タイ・プロサッカー移籍を支援 日本人エージェント奮闘
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ハンガリー、セルビアで12年プレーし、ラオスリーグのラオトヨタと契約した本間和夫選手(中)と真野さん(左)=ビエンチャン(真野さん提供) タイにはプロサッカーの「タイ・プレミアリーグ」がある。今季は20チームで編成。日本のJリーグ1部J1に相当し、優勝チームはアジアナンバーワンのクラブチームを決めるAFCチャンピオンズリーグへの出場権を得る。観戦スポーツとしての人気度だけでなく、実力や技術力も向上を続けるタイのプロサッカー。今、新たな活躍の場を求めて日本人選手が続々と海を越えてタイに渡っている。2014年シーズン初頭で実に60人。これら選手たちをタイ側で支え、エージェントとしてサポートを続ける元サッカー選手を追った。
◆選手経験生かす
仙台市出身の真野浩一さん。欧州などに向けたサッカー留学支援企業「ユーロプラスインターナショナル」(東京都渋谷区)のタイ現地責任者だ。タイでアパレル業やサッカーサポート業務などを展開する会社を経営する実業家でもある。兄貴分としてサッカー選手からの信頼は厚い。これまでに計18人の日本人選手をタイやラオスにあるプロサッカーリーグに送り出してきた。
真野さんは高校時代までサッカーを続け、大学時代はフットサルに励んだ。大学在学中にタイを旅行。地元の人々の優しさに触れ、卒業後はタイのフットサルリーグの門をたたき入団した。
だが、プロの世界は予想以上に厳しかった。1年もたたないうちに契約を解除され、行き場を失う。それを機に、アパレル業などを手がける会社を生活の基盤として立ち上げた。
「サッカーにかなり未練がありました」と話す真野さん。タイでアパレル小売業などを続けながらチャンスを待った。
そんな時、バンコクを主会場にフットサルの12年ワールドカップが開催され、日本側のエージェントから「日本の学生チームと親善試合をしてくれるタイのチームを紹介してほしい」と打診があった。これが、日本人のサッカー選手とタイのチームを結びつけるきっかけとなった。
タイ・サッカー界の実力が高まるとともに、自然と海外からの問い合わせも増えるようになった。日本と韓国、欧州からも。それにつれエージェント業も活発となった。当時も今もタイを拠点に活動する日本人エージェントは真野さんだけだ。
◆近隣諸国も視野
これまでに50人前後の日本選手が真野さんに連絡を取ってきた。そのうちJリーグ出身者は1割程度。残る9割が新天地を求めて海を渡った若者たちだ。しかし、全ての選手の希望がかなうわけではない。
タイ・プレミアリーグの実力は年々上昇している。真野さんは、JリーグのJ2に相当するディビジョン1やさらに下部の同2を日本人選手に勧めることも時にはある。「トップリーグからだんだん下部に落ちていくよりも、下から一つ一つはい上がっていくほうが選手がやる気を出すためにははるかにいい」。こう指摘する真野さんには「7年間、タイのサッカー界の成長を見てきた」という強い自負がある。
「欧米の選手は評価の判断基準として給料を第一に考える。一方で日本の選手は、リーグの格付けを優先するケースが多い」というのも大きな理由だ。だから、「給料がゼロでもいい」と口にする選手にはしっかりと話して理解してもらう。「給料が出なければ、どうやってサッカーを続けていくのか。どうやって家族と生活していくのか」。そしてこうも言う。「自分の仕事は選手の価値を1円でも高めていくことだ」
タイのサッカー界も日本や他国と同様に、全選手の望みどおり成功することは期待できる状況ではない。競争が進むにつれて淘汰(とうた)も生じる。そこで真野さんは、タイの近隣諸国に相次いで誕生し、成長を続けるプロサッカーリーグも視野に入れている。ラオス、ベトナム、ミャンマー。技術的には発展途上にあるが、いずれも可能性を持つ国ばかりだ。
「周辺国から始めてタイ・プレミアリーグを経由し、Jリーグや欧州リーグにステップアップしていく道があってもいい」と真野さんは語る。この構想を実現するため、各リーグとの関係作りに可能な限り時間を費やしている。(在バンコク・ジャーナリスト 小堀晋一)