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タイ、パイロット争奪戦過熱 LCC就航、大手航空から集団流出も
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路線を次々と拡大しているタイ・エアアジアXの旅客機(写真は同社HPから) 東南アジアの中心に位置するタイで、格安航空会社(LCC)の就航をきっかけに激しいパイロット争奪戦が起こっている。大手航空会社ではパイロットが集団で流出するなど経営にも影響が出始めており、「事態は深刻」と航空関係者は指摘する。日本とタイを結ぶ新路線もLCCの就航が次々と決まっている。LCCのパイロット需要は今後も高まりそうだ。過熱するタイの航空事情をまとめた。
◆大規模リストラ
タイ地元紙クルンテープ・トゥラキットが8月25日付で報じたニュースは、東南アジアの航空業界に激震をもたらした。国を代表するタイ国際航空で欧州エアバス機を担当するパイロット数十人が退職の意向を示し、うちA330型機などに搭乗する機長と副操縦士全員が一斉に辞表を提出したというのだ。
移籍先は、マレーシアの大手LCCエアアジア傘下のタイ・エアアジアX。現在の給与水準ではタイ航空の方が上回っているものの、機長への昇格時期が大幅に短縮されるなど将来の待遇面が転職の動機になったとみられる。
タイ航空の現在の財務状況は火の車だ。2013年の売上高は前年比微減の約2124億バーツ(約6966億7200万円)だが、最終損失が約120億バーツにのぼる。今年上期(1~6月期)も状況は変わらず、売上高954億バーツ(前年同期比11%減)に対し、最終損失は半期で約103億バーツと悪化している。
このためタイ航空は大規模なリストラを断行、今後5年間で従業員6000人を削減する。社債の発行や金融機関からの融資などで来年上期までに総額270億バーツの資金調達も行う。
事態を重くみたタイの軍事政権も対策に乗り出した。取締役とその家族に対して与えられてきた無償搭乗の優遇措置の廃止を決定。従来、優遇対象者は国際線と国内線をそれぞれ年に10往復、ビジネスクラスで無償搭乗が可能だった。
タイ航空が再建策の柱の一つに打ち出しているのが、皮肉にも同社が経営難に陥る元凶となったLCCへの進出だ。子会社のLCCタイスマイルの拠点を、現在のスワンナプーム国際空港から運営コストが安いドンムアン空港(旧国際空港)に移転すると決めた。競争が激しくなった路線には、LCC機を充てていく。
◆低価格で攻勢
一方、飛ぶ鳥を落とす勢いなのがパイロットの集団転職で注目を集めるタイ・エアアジアX。9月からバンコク-成田間で毎日運航便を新設した。週5便の関西便も同時就航だ。バンコク-成田便は従来の一般的な航空運賃に比べ30%以上も安くなる。エアアジア・グループは、タイ国内路線や東南アジアの主要都市を結ぶ新路線も積極的に開設しており、安価な料金と広範囲なネットワークで日本や中国などからの顧客の取り込みを急速に進めている。
その他のLCCも攻勢を強めている。タイ航空も出資するノックエアは、シンガポール航空傘下のスクートと合弁でノックスクートを設立。来年早々にも日本便を開設する。
豪カンタス航空傘下のジェットスター・アジアは、6月からバンコク-福岡便の運航を開始した。この影響を受けて、同便を毎日運航させていたタイ航空は9月からの減便を決めた。
東南アジア各地を結ぶLCC機の就航も相次いでいる。ベトナムのベトジェット・エアは9月からバンコク-ホーチミン便を増便したほか、新たな合弁LCCを設立してタイ国内路線にも進出する。ミャンマーのゴールデン・ミャンマーも、ヤンゴンとチェンマイを結ぶ新路線を9月中にも開設する計画だ。
パイロット獲得競争を引き起こすほど過熱するLCC競争。経済成長の続くタイ、そして東南アジア諸国連合(ASEAN)市場の現在の縮図とも言えそうだ。(在バンコク・ジャーナリスト 小堀晋一)