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海外情勢
タイ国境で陸路交易活発化 AEC発足見据え、軍政後押し
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鴻池運輸が始めた物流新サービス「メコン・フード・エクスプレス」で、タイ-カンボジア国境を通過する同社の冷蔵冷凍トラック(同社提供写真) 来年末の東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体(AEC)発足を前に、タイと周辺各国(マレーシア、ミャンマー、ラオス、カンボジア)との陸路による国境貿易が活発化している。
なかでも、ミャンマー、ラオス、カンボジアの3カ国の対タイ貿易収支(ミャンマー発の天然ガスを除く)は、年10%を超える高い伸びで推移しており、タイを拠点とした産業補完の構図が鮮明となりつつある。タイの軍政当局も国境検問所周辺に経済特区を設置する方針を決め、これまでに辺境10県の申請を認可し、後押ししていく考えだ。過熱するタイ国境貿易の最新動向をまとめた。
◆鴻池運輸が新事業
バンコクから東に約250キロ。カンボジア国境にある街がサケオ県アランヤプラテートだ。国境線の向こうにはタイ人富裕層向けに建てられたカジノ付きホテル群。検問所を超えればプノンペンまでは8時間という道のりだ。ところが、これまで長距離トラックは通関手続きのため、ここで荷を積み替えなくてはならなかった。付近一帯は日差しが強く、ほこりが舞う乾いた土地。せっかく冷蔵冷凍トラックで荷を運んでも、外気にさらされるため、商品の劣化が深刻な問題だった。
バンコクからプノンペンを経由しベトナムのホーチミンに至るルートは「南部経済回廊」と呼ばれ、国際的にも注目される物流の大動脈。整備を求める声が交易の活性化とともに高まり、関係各国も最近になってようやく対応に乗り出した。ベトナム、カンボジア両国政府は、国境で荷を積み替える必要がなく、同一トラックが両国間を行き交うことができる相互交通ライセンスの交付を開始。現在、タイ政府も発行に向けた準備を進めている。
こうした動きを先取りして、総合物流の鴻池運輸は新たなサービス「メコン・フード・エクスプレス」を8月半ばから始めた。マイナス20度から常温帯まで4温度帯に荷室が区分されたトラックが、バンコクやホーチミンからプノンペンに向けて生鮮品や加工食品などを運んでいく。プノンペンからは衣料品や靴などを輸送する。
機械の部品や部材、建設資材などの工業関連品目も、将来の交易拡大に向けた動きが始まっている。タイの倉庫業大手タイコン・ロジスティクス・パークは総額36億バーツ(約122億円)を投じ、複数の国境沿いで新たな倉庫開発に着手した。建設資材や消費財などの利用を想定、タイを域内の物流拠点とする考えだ。同じタイ資本のJWDインフォ・ロジスティクスも2億5000万バーツを拠出して周辺3カ国での物流事業展開に備える。中国雲南省に通じる北部チェンライ県では、タイ港湾公団が河川港に冷蔵倉庫を建設する計画を打ち出した。
◆続々と新路線
こうした動きはサービス関連産業にも波及している。バンコクで高級百貨店を展開するザ・モール・グループは、ラオスへの玄関口の東北部ウドンタニ県やミャンマー国境沿いの地方都市に進出する計画だ。
タイ国内の女性1人当たり生涯出産人数は1.6(2012年)と先進国並みに低く、少子高齢化対策が喫緊の課題となっている。ザ・モールは国境沿いで小売業を展開することで、近隣国からの消費ニーズをつかもうという戦略だ。
地場観光業のグリーンフォレスト・リゾート&ホテルは、北部ターク県メーソートにリゾート施設を建設する。メーソートはミャンマーに隣接し、タイ中部を横断する「東西経済回廊」の接続拠点。将来の物流拡大や周辺開発を見込んで今のうちに投資しておこうとの判断だ。
このほか、長距離バスの運行会社も国境路線の拡大を決めている。ナコンチャイエアは12億5000万バーツを投入して長距離向け大型バスを調達する。バンコクから東北部ノンブアランプー県などを経由、ラオスに向けた新路線やカンボジア線などを新設する予定。カンボジア線については状況を見てベトナムまで延伸するもくろみだ。
タイと国境を接する周辺4カ国との陸上貿易は全体で年6%ほどの伸びだが、金額の大きいマレーシアを除けば10~20%近くに達する。タイから周辺国に部品や素材、食料品などが輸出され、周辺国からは完成品や繊維製品がタイに輸入されるという構図だ。タイの国境の街はAECの物流拠点となりそうだ。(在バンコク・ジャーナリスト 小堀晋一)