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「第3のビール」増税のピンチ直面 “狙い撃ち”に反発必至

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

「第3のビール」増税のピンチ直面 “狙い撃ち”に反発必至

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ビール類の酒税額と市場推移  ビール類飲料の中で最も価格が安い「第3のビール」が増税のピンチに直面している。節約志向の高まりを背景に市場の拡大が続いており、政府が増税でガッチリ税収を確保することを目的に検討の俎上(そじょう)に載せたためだ。ただ、消費税増税で負担が増す中、晩酌の強い味方を“狙い撃ち”にした増税に反発の声が広がるのは必至。年末の与党の税制改正論議に向け議論紛糾は避けられそうにない。

 49円めぐる攻防

 「消費税増税後、ただでさえ妻から飲む本数を減らされたというのに…」

 第3のビールで毎晩、晩酌する東京都杉並区の自営業男性(72)は、第3のビールが増税の検討俎上に挙がっていることにショックを隠さない。

 今年4月の消費税増税後、今まで500ミリリットル缶2本まで許されていた飲む本数を、1本に減らされた。

 仮に今後の酒税法改正で第3のビールが増税されれば、「家計防衛のため350ミリリットル缶1本まで量を減らされてしまうかもしれない」と不安がる。

 だが、増税の足音は確実に大きくなっている。政府は、ビールと発泡酒、第3のビールの間で大きく異なる現在の税率格差を縮めることで第3のビールに消費者が流れ、税収の減る現状になんとか歯止めをかけたい考えだ。

 具体的には、税率の低い第3のビールを増税する一方、税率の高いビールは減税する案が有力だ。そうなれば、現在はビールと第3のビールの間にある49円の税差が縮まり、第3のビールの店頭価格は現在の145円程度から大幅な値上げになる可能性が高く、価格の魅力は大きく薄れる。

 ビール業界は少子化で市場が縮小する中、より税額の低い商品に着目して新たなジャンルを切り開いてきた。

 発泡酒、第3のビールの登場はいずれも業界努力のたまものだが、市場が大きくなればその都度、増税の標的にされ、税率が引き上げられるという業界と財務省のいたちごっこが繰り返されてきた。

 第3のビールも、2006年に350ミリリットル缶で3.8円増税され、その後も幾度となく増税対象に挙がっては業界の反発で立ち消えてきた経緯がある。

 ここにきて、例年以上に増税機運が高まっているきっかけはサッポロビールの第3のビール「極ZERO(ゴクゼロ)」について製造方法上の問題を国税当局が指摘した影響が見逃せない。

 調査の結果、同社は税率の高い発泡酒として再発売、差額分の酒税を修正申告する事態になり、改めて発泡酒と第3のビールの境界線の複雑さが浮き彫りとなった。

 将来的には一本化

 ビール類の酒税の見直しについては14年度税制改正大綱でも、「格差を縮小する方向で見直しを行い、速やかに結論を得る」と明記されている。サッポロの件は税務当局につけ入る隙を与えた形で、増税の名分に使われかねない状況だ。

 財務省は早期にビール類の税額差を縮め、将来的には、一本化させる青写真を描くが、問題は税額をそろえた後、ビール類の販売と税収がどうなるかだ。

 参考になるのが、品質によって3つの税額があった日本酒(清酒)の前例だ。

 1988年まで特級、一級、二級と3分類に税率が分かれ、特級と二級では1.8リットルで800円もの税差があった。

 清酒の前例 業界は徹底抗戦へ

 税額そのものは1992年までに段階的に一本化されたが、一本化される前の82年~91年と、92年~2001年の10年間の平均値の比較でみると、数量は約16%減の約119万キロリットルに、税収も約40%減の1522億円まで落ち込んだ。

 バブル崩壊や消費税導入など複数の要因もあるが、等級を見て品質を判別できなくなったことも一因との指摘がある。

 こうした流れがあるだけに、麻生太郎財務相も7月の会見でビール類の税金について「(清酒の税額について)『分けなくなった結果、どうなったかというのを少し思い出してみたらどうか』という話を(主税局には)してある」と述べた。

 もっとも、歴史に照らしてみれば税額一本化後、清酒の市場減退を招いたのは事実だ。

 加えて、財務省の悩みは、来年10月に消費税率を10%へ引き上げるかどうかの判断を年末に控え、負担が重なることに世論の反発が高まることだ。

 ビール酒造組合の試算によれば、今年4月の消費税率8%への引き上げに伴いビール類の税負担は年800億円増加し、消費税率が予定通り10%になると税負担額はさらに500億円増えるという。

 消費増税分は、そのまま店頭価格の値上がりにつながり、そこで第3のビールが増税されれば販売を直撃する。税収も落ち込みかねない。

 ビールの出荷数量は1994年度の741万キロリットルから減少が続き、2012年度は280万キロリットルと、3分の1程度にまで落ち込んだ。ビール業界では「総需要回復のため、ビール類全体での大幅減税が最重要」(ビール酒造組合)とし、徹底抗戦の構えだ。(今井裕治)

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