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海外情勢
中国の深い闇…16万人の「幽霊公務員」 繰り返される腐敗の歴史
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香港で続く大規模デモ。傘下する民主化推進派の象徴となっている「黄色い傘」は催涙弾などから身を守る盾になるという。政府への不満は中国のあちこちにたまっている。 腐敗撲滅をスローガンに掲げる中国の習近平国家主席。「トラもハエも叩く」と目を光らせてはいるが、中国の闇には「幽霊」までが潜んでいた。仕事をしていないのに政府から給与を得ていた「幽霊公務員」が16万人もいたことが判明したのだ。日本なら政権が転覆しかねない大疑獄だが、さしたる波乱はなく、それだけ深い中国の暗部を浮き彫りにしたともいえる。古来、政府腐敗が国の崩壊を招く元凶になるのは中国の歴史が示す通り。国の基盤に関わる重大な問題なのだ。
中国の「反腐敗キャンペーン」は思わぬところに飛び火している。
秋の味覚として珍重される上海ガニの売り上げが悪化して上海市では昨年のシーズンよりも価格が最大30%も下落したという。共同通信が現地メディアの報道として伝えた。
習指導部は、公費接待や贈答品購入を戒める綱紀粛正策を推進中。これにより、上海ガニの「団体購入」なる大型需要が激減したとみられる。上海市では国慶節(建国記念日)連休中の10月5日までの10日間で、取引量は19%程度減ったという。
それだけではない。例年9月の中秋節に向けて盛り上がる「月餅」の市場は先細りの一途だ。
政府が「月餅」に月餅以外のものを入れる「過剰包装」や公金で月餅を購入することを規制したためだ。
月餅は、餡や木の実などを月にみたてた丸い形の生地でくるんだ伝統的な菓子。お世話になった人に贈答品として送る習慣があるが、それは賄賂の温床になりかねない。
CNNは昨年、新華社の報道として「月餅ギフトがエスカレート傾向にある」と伝えた。それによると、「高級腕時計付き月餅」「高級酒付き月餅」「高級茶付き月餅」のほか、「現金入り月餅」もあらわれた。
もはや、月餅なのか何なのか、分からない始末。まるで「越後屋、そちも悪よのうぉ」とニンマリする悪代官への贈り物のようだ。
政府は「『月餅と書かれた箱に月餅以外のものを入れることを禁止』する規制を打ち出した。余計なものを入れさせない苦肉の策だ。
こうした措置がきいたためか、新華社によると、広州では今年の月餅の販売量は前年より10%下落するとの予想もある。
中国で、今年1~6月に立件された贈収賄などの汚職事件は1万9081件で、前年同期比9・6%増。立件の対象人数も2万5240人と同5・4%増としており、汚職取り締まりの強化が進んでいる。
摘発の一方、未然に不正を食い止める通達も目立っている。
人民網(電子版)によると、中国教育部は、大学教員に対して、「レッドライン(厳禁行為)7カ条」をこのほどまとめた。
違反した教員は解任、除名の厳しい処分もありえるとの規定で、驚くのはその中味だ。
「7カ条」は教員として徳に背く行為として、示されている。
「国家利益に損害を及ぼす行為」「中国共産党の路線・方針に違反する行為」はもちろん共産党支配下では厳禁だが、ほかの5つの厳禁行為には、大学内の内情がうかがえるような内容だ。
〈一、科学研究のデータの改竄・捏造、科学研究費の違法使用などの行為
一、教学業務に影響を及ぼすような兼業、副収入を得る活動
一、入学試験などでの汚職行為
一、学生や保護者から贈答品、有価証券、小切手を受け取ること
一、学生に対するセクハラ、学生との不適切な関係をもつこと〉
これまで中国の大学の中では、どんなことが起きていたのであろうか-。
人民網によると、2013年度の新語トップ10には「中央八項規定」(国家公務員の勤勉・倹約規定など)が入った。反腐敗キャンペーンの機運を感じさせるが、実現の先は遠そうだ。
昨年の摘発の行為の結果、仕事をしていないのに政府から給料を受け取っていた中国の「幽霊公務員」は16万2629人を支払い名簿から「削除」したという。AFPが人民日報の報道として伝えた。
幽霊公務員は北部の河北省で多く、約5万6000人いた。チベット自治区、上海にはいなかった。
働いていないのに給与を受け取っている公務員について、人民日報は「組織幹部から最もよく報告されていた問題だ」と指摘したが、放置されたいたのだろうか。
該当者は罰せられるというが、詳細は明らかになっていない。そもそも、どんな給与システムになっていたのか。疑問はいくつもわく。
「トラもハエも叩く」と隈無く汚職を取り締まる意気込みをみせる習近平国家主席。今年7月には、中国公安部が「猟狐2014」(キツネ狩り)と名付けた海外に潜伏する腐敗官僚の摘発キャンペーンも始めたが、トラ、ハエ、キツネに続き、幽霊までいたとは…。
政官の腐敗は国の根幹を揺るがすことは、長い歴史からの教訓になっている。古くは中国・後漢末期の「黄巾の乱」(184年)。賄賂が横行した政治腐敗を背景とした農民らの決起に位置付けられ「黄色の頭巾」が象徴だった。その後の三国志の時代を迎えるきっかけとされる。
中華人民共和国の建国後すぐに行われた「三反・五反運動」も、公務員の「汚職、官僚主義、浪費」と業者の「脱税、贈収賄、原料不正、国家経済情報の悪用、横領」の払拭を目指した政治キャンペーンだったが、腐敗との戦いはなお続いている。