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安倍首相が執念を燃やす「法定実効税率」の引き下げ…成果を挙げられるのか?

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安倍首相が執念を燃やす「法定実効税率」の引き下げ…成果を挙げられるのか?

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企業規模別税負担率 【日曜経済講座】編集委員・田村秀男

 ■不公平税制の抜本改革急げ 法人税減税と経済再生

 景気減速の中、来年10月から消費税率を予定通り引き上げられるかどうか微妙だが、安倍晋三首相は法人に対する法定実効税率(国税・地方税合計の税率)引き下げには執念を燃やしている。法人税減税は成果を挙げられるのか。

 財務省によると、法定実効税率は平成24~25年度37%。米国(40%強)より低いが、ドイツ(29%強)、英国(23%)など欧州に比べると高い。だが、実際に税引き前の最終利益のうちどれだけ国税・地方税を払っているかをみた実効税負担率を法人の規模別にみると、全く話が違う。

 グラフを見よう。銀行大手平均の負担率は25年度19・6%、金融保険業を除く大手企業平均は26・3%だ。中堅企業は同37・9%、中小企業が同39%で「逆累進税率」の構造になっている。銀行は日銀からの超低利の資金供給で、楽々と利ざやを稼げる。資金を日銀当座預金口座に留め置いても、大部分は0・1%の金利がもらえる。特権に応じた税負担とは言えまい。

 法人税実効税率の引き下げを強く求めているのは、大企業や大手金融機関で構成される経団連だが、実際の税負担を踏まえているのだろうか。中堅、中小企業との税負担率格差はまさに、不公正税制であり、産業界を代表する経団連は法定税率引き下げの前に、不公平税制の是正を提起すべきではないだろうか。

 まだまだ、衝撃的なデータがある。「税務会計学」の権威、富岡幸雄中央大学名誉教授(89)は主要企業別の実効税負担率を綿密に調べ上げた。「公正な法人税制こそが、企業国家日本の再生の鍵。兵隊に行って生き残った私の最後の国家へのご奉公」という使命感による。

 教授が算出した24、25の両年度合計平均の持ち株会社単体の実効税負担率を取り出してみる。三井住友フィナンシャルグループ0・001%(グループ全体の連結財務会計上の負担率は22・9%)、ソフトバンク0・003%(同37・8%)、みずほフィナンシャルグループ0・097%(11%)、三菱UFJフィナンシャル・グループ0・306%(18・9%)、ファーストリテイリング6・91%(38・5%)、キリンホールディングス12・5%(37・7%)と超低税負担率だ。

 財務会計でみる税額は税申告額と一致するとは限らない。従ってカッコ内の負担率はグループ全体の実際の税実効負担率ではないが、教授は参考値として書き入れた。実はこの奇怪な数値は、大企業や金融機関有利の法人税構造を浮き彫りにしている。

 銀行や企業大手は傘下に多くの国内子会社や関係会社を抱えるが、これら法人から受け取る配当金は「受取配当金不算入制度」により非課税となる。また、海外子会社から受け取る配当も「外国子会社配当金不算入制度」に応じて実質的に無税になる。その結果、持ち株会社の税負担が極端に低くなる。持ち株会社でなくても、大手商社や多国籍化している企業もこの税制を大いに活用している。

 事業会社の実効税負担率(連結ベース)は丸紅7・1%、日産自動車21・4%、三菱商事23・2%、トヨタ自動車31・6%という具合だ。

 富岡試算値などからうかがえるのは、大手企業や銀行は節税して手元資金を確保し、海外でM&A(企業合併・買収)攻勢をかける一方、配当を増やして内外の投資家を引きつけるグローバル化に徹している現実だ。大手企業のビジネス戦略としては当然のことだ。大いにやればいい。収益を稼げばいい。そして納税すれば文句ない。

 だが、グローバル企業は日本国内向け投資、雇用を増やさせるという安倍首相の意図に応えられるだろうか。法人税実効税率を引き下げてもらっても、大手企業は配当に回し、海外展開に残りの資金を活用するだけではないのか。

 自民党税調や政府税調は法人税実効税率引き下げに伴う税収減をカバーするために、赤字法人にも課税する「外形標準課税」強化を検討している。すると、国内雇用の7割を引き受けている中堅・中小企業の打撃となる。しかも、中堅・中小の実効税負担率は前述したように、大手や銀行に比べて圧倒的に高い。地方経済もこれら内需型の企業に支えられている。さらに課税するなら「地方創生」は看板倒れだ。

 日本再生のために地方税を含めた全般的で大胆な法人税率の引き下げは必要に違いない。それは不公平税制の是正が前提だ。富岡教授は、国・地方合わせた法人税率20%として一律、公正に課税すれば、税収は1・5倍になると試算している。

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