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【クレムリン経済学】先行き見えぬルーブル安 インフレ率上昇、政権の脅威に

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【クレムリン経済学】先行き見えぬルーブル安 インフレ率上昇、政権の脅威に

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 ロシアの通貨ルーブルが急落している。中央銀行は変動相場制への移行など対処策を打ち出し下げ止まりの様相を見せているが、上昇の気配は見えないままだ。ルーブル急落は過去にもあったが、今回はウクライナ危機という特殊要因を背景としており、先行きは極めて不透明な状況だ。

 ◆両替所の前に列

 「ここの両替のレートはいくら?」

 11月中旬、モスクワ市郊外の空港では、手持ちの現金を少しでも良いレートで交換できる両替所を懸命に探す市民の姿が見られた。ルーブルは対ドルレートで11月3日からの1週間だけで約8%下落。年初来の下落率は30%を超え、1ドル=50ルーブルに近い水準で推移している。そのようななか、ルーブル建てで給与や年金を得る市民の懸念は強まる一方だ。

 ソ連崩壊後、ルーブルが暴落し紙くず同然になったロシアでは、国民のルーブルに対する信頼度が低い。人々は少しでも資産を守ろうと両替所の前で列をなし、ルーブルをドルに換金することが当たり前になった。今回の通貨下落は、1998年、2008年の経済危機に匹敵する規模とも言われている。

 ルーブル安は、ウクライナ危機に伴う欧米の対露制裁をきっかけに、原油価格の下落、また投機的な動きが重なり、加速したと指摘されている。

 ウクライナ情勢をめぐっては、欧米は7月に発生した同国東部上空でのマレーシア機撃墜事件を境に対露制裁を本格化させた。それまで個人への渡航禁止や資産凍結などが中心だったが、事件を契機に金融やエネルギー、軍事などロシアの主要産業への制裁にシフトし、対象となった企業は欧米市場での資金調達が事実上行えなくなった。これがロシア経済の見通しを不透明にさせた。

 主力輸出商品の原油価格の下落も追い打ちをかけた。年初に1バレル当たり100ドルを超えていた米国産標準油種(WTI)は、11月には80ドルを割り込んだ。

 中国や欧州の景気減速による需要減や、米国のシェール革命による供給増、サウジアラビアの価格引き下げなどによるものだが、ロシアのプーチン大統領は中国紙に対し、「非常時におけるエネルギー資源の価格形成は、政治が大きな要因となっているようだ」などと述べ、原油価格が政治的に“操作”されているかのような考えを披露した。

 ロシア中央銀行は10日、従来の通貨バスケット制から変動相場制への移行を発表し、ルーブルの下落を一定程度押しとどめた。これまで、中銀はルーブルが一定の変動幅を超えると為替介入して買い支えていたが、それを見越した投機筋によるルーブル売りが頻発。そのため中銀は通貨バスケット制の撤廃を表明し、それにより投機的な取引が減少したとされる。

 ◆経済制裁が契機

 ただ、過去のルーブル下落と今回の決定的な違いは、「ウクライナでの紛争とそれに伴う経済制裁」(英紙フィナンシャル・タイムズ、FT)が契機となっている点だ。ロシア経済全体を見れば、政府債務残高は国内総生産(GDP)の13%に過ぎず、外貨準備高は4300億ドルをわずかに下回る程度であり、極端に悪い状況とは言い難い。

 しかし、プーチン氏がウクライナ問題で妥協する気配が全くないなか、ロシアは「緊張を高め、さらなる制裁を招き、経済の悪化を招くという危険なサイクル」(同)から抜け出せなくなりつつある。

 ウクライナ情勢がルーブル下落の要因との認識はロシア国内でも共有されている。経済紙「RBK」は12日、「ルーブル下落の本質的な要因は国際的な制裁であり、その他の要因はその派生に過ぎない」と指摘し、ルーブル下落はもっぱら経済制裁によるものと断じた。

 ルーブルの下落は、食料などの多くを輸入品に頼るロシアの消費者物価の急上昇を招いている。ウリュカエフ経済発展相は17日、2014年のインフレ率が「9%に達する可能性がある」との見通しを明らかにした。インフレは「過去に、ロシア人が政権を葬るに至った数少ない要因」(FT)とも言われており、プーチン氏は厳しい状況に追い込まれている。(モスクワ 黒川信雄)

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