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異論、中断…薄氷決定の4時間40分 日銀総裁のかじ取り、困難さ露呈
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名古屋市内のホテルで講演する日銀の黒田東彦総裁=25日午前 追加の金融緩和が決定した10月31日の日銀金融政策決定会合の議事要旨からは、5対4の薄氷決定に至った会合の生々しいやりとりが垣間見えた。政府側の出席者が麻生太郎財務相や甘利明経済再生担当相に内容を伝えるため、一時的に中断するハプニングもあり、突然の追加緩和への混乱ぶりがうかがえる。
日銀の金融政策は政策委員9人(総裁、副総裁2人、審議委員6人)で決める。10月31日の会合は約4時間40分に及び、昨年3月の黒田東彦総裁の就任後、最長となった。
複数の関係者によると、日銀が追加緩和を検討し始めたのは9月中旬。だが、日銀幹部が審議委員に説明に回ったのは会合直前の10月29~30日。「直前に何だ」と不快感を示す委員もおり、採決は割れることが予想された。
要旨では、発言者は特定されなかったが、賛成した委員の一人は、追加緩和のタイミングについて「年末から来年にかけての賃金交渉の重要な時期」と説明。春闘前に打ち出すことで賃上げを促す狙いもあったとみられる。
黒田総裁は25日、名古屋市で講演し「賃金や価格設定の動向に大きな期待と関心を寄せている」と語った。
一方、反対した委員からは、副作用への懸念のほか、「物価は相応に上昇しているというのが家計の実感」との意見も出ていた。
午前9時のスタートから3時間半が過ぎた午後0時半ごろ、政府側出席者の宮下一郎・財務副大臣らが会合の一時中断を要請。麻生財務相への連絡とみられ、約10分後に再開されると「経済の好循環をさらに後押しするための措置として、政府としても歓迎する」と、追加緩和に賛意を示した。
日銀は追加緩和で、「(物価目標)2%の早期実現の決意」(黒田総裁)を改めてアピールしたが、足元の原油安の影響などで物価上昇率が2%に達する気配は見えていない。野村証券の木下智夫チーフエコノミストは「平成27年10月にもう一弾の追加緩和をやるだろう」と予想する。
ただ、今回の議事要旨では、追加緩和による物価上昇効果を疑問視する委員が複数いることも判明。黒田総裁の金融政策のかじ取りは一段と難しくなってきている。(藤原章裕)