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中国経済、利下げに続くのは不動産価格引き上げか 改革路線への期待粉砕も

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

中国経済、利下げに続くのは不動産価格引き上げか 改革路線への期待粉砕も

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中国の住宅価格指数と金利 【日曜経済講座】上海支局長・河崎真澄

 ■改革路線への期待粉砕も

 「このタイミングは意外でしたね」。香港の繁華街で金融機関の幹部2人と会食していた11月21日午後7時(日本時間同8時)すぎ。ほぼ同時に記者(河崎)を含む3人の携帯電話に着信したのは、中国人民銀行(中央銀行)による貸し出し・預金の基準金利の引き下げの決定を知らせるフラッシュニュースだった。

 2012年7月から動きのなかった中国の政策金利。だが、李克強首相らが一貫して金融緩和に慎重な姿勢を示しており、同席した金融機関の幹部は利下げは予想外だったと何度も首をひねった。

 経済政策の微調整で苦境を乗り切ろうとしていた従来路線とは明らかに異なる。中国共産党政権が翌年の経済政策を討議する1年に1回の中央経済工作会議を12月初めに控え、成長重視か構造改革優先かをめぐり、路線対立が起こっている可能性がある。

 ただ、中国の景気不景気を如実に語る不動産市況の下落を考えれば、実際はさほど意外な時機ともいえない。

 中国国家統計局が発表している新築住宅の価格指数(低所得者向けの公共性の高い住宅を除く)は、昨年から描く下降カーブが急峻(きゅうしゅん)になっている。都市別の住宅価格指数は今年9、10月とも主要70都市のうち69都市までが下落。公式の統計数字ではつかみきれない不動産市況の実態は、さらに厳しい情勢にある。

 需給バランスを無視した供給過剰が原因の不動産不振だが、利下げ発表の翌日、証券アナリストは、「政策金利と不動産の市況はリンクしている」と解説してくれた。

 中国の過去2回の利下げ局面をみると、12年も08年も住宅価格指数の急降下で警報が鳴り、その後、利下げによる資金循環で市況が回復に向かったことが読み取れる。

 中国は今年7~9月期の国内総生産(GDP)が物価変動を除いた実質で前年同期比7・3%増と、リーマン・ショックの影響で落ち込んだ09年1~3月期以来の低水準だった。雇用維持と社会安定のため、いわば内政上の事情で設定した通年の政府成長率目標7・5%も守りたい。このことが、金融緩和に消極的だった李首相や人民銀行に「背に腹は代えられぬ」と判断させたのか。

 さらに、不動産市況の下落が続けば「シャドーバンキング(影の銀行)」と呼ばれる金融監督当局も把握しきれていない高利でグレーな融資形態で不測のデフォルト(債務不履行)が多発するのではないかとの懸念もあった。

 年利10~30%もの高利回りをうたって銀行が販売する理財商品や信託商品だけで、シャドーバンキング融資残高は少なくとも22兆7千億元(約435兆円)にも上る。

 甘い言葉に誘われた投資家から集めた資金の多くは地方政府や第三セクター、民間企業による不動産開発プロジェクトに回されてきた。土地はすべて国有の共産国家にあって、農民から半強制的に農地を安価収用、マンションや商業施設などを業者に開発させて高値売却する手法だ。

 ただ、この過程でシャドーバンキング関連の金融商品の担保となっている不動産の市況が悪化し、売れ残りがヤマ積みとなれば資金繰りに行き詰まる開発プロジェクトが出る。地方政府でデフォルトの連鎖反応が起きれば金融システムも傷つきかねない。

 人民銀行は今回の利下げについて、「金融政策の方向性は変わっていない」としながらも、「臨機応変に小刻みの調整を行い、適切な金利水準を保つ必要がある」とも説明し、追加利下げの可能性をにじませている。2年4カ月前の緩和局面でも利下げは1カ月間で2度におよんだ。

 共産党政権内の考えが、李首相らが訴えてきた構造改革優先から、習近平国家主席や江沢民元国家主席らの既得権益派が求めている成長優先に逆戻りしたとすれば、今回の利下げを皮切りにした金融緩和サイクルと、さらなるインフラ投資など大型景気対策による拡大路線回帰のシナリオが描かれた懸念もある。

 利下げ局面に入って人民元の為替相場が今後下落し、国際社会から再び元安への批判が強まっても、逆に輸出促進に好都合だとして黙認するとの見方も出始めている。

 政権発足直後、肥満体の中国経済を筋肉質に変え、安定成長への軟着陸をめざした構造改革を進める「李克強経済学(リコノミクス)」に国際社会の注目が集まった。

 その行方は、12月の経済工作会議で明らかになるだろうが、利下げに続く政治主導型の不動産価格引き上げ策が打ち出されるとすれば、構造改革路線への期待感はここで打ち砕かれることになる。

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