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【論風】変わるサイバー空間の国際秩序 国民の利益守る戦略策定を

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【論風】変わるサイバー空間の国際秩序 国民の利益守る戦略策定を

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 □日本危機管理学会理事長、国際社会経済研究所主幹研究員・原田泉

 安倍晋三首相の靖国神社参拝以来、戦後の国際秩序に関する論議が最近目につくが、サイバー空間の国際秩序をめぐっても、米国を中心としたせめぎ合いが顕在化している。実社会の戦後国際秩序は国家主権の尊重を基本としてきた。国家主権は他国から内政に対する干渉を受けないことによって成立し、たとえ独裁国であっても、国境内の大部分を実効支配し国民の一定の支持を受けていれば、国連からは一国家として認められてきたのである。

 これに対しサイバー空間は、もともと対ソ軍事戦略の一環として米国が開発したが、冷戦構造崩壊後米国の戦略が変わり、自由で国境のない世界であるとして商用化されることで、世界中に急速に普及していった。しかしサイバー空間が実社会での影響力を増すにつれて、その一部だと認識され始めると、国連や国際会議の場でロシアや中国、中東諸国などがサイバー空間における国家主権を主張し、日米欧と対立してきたのである。

 ◆強化されるネット規制

 サイバー空間での国家主権の主張は一面ではネット検閲を肯定することにもなる。「アラブの春」でインターネットやソーシャルメディアが民主化運動に大きな役割を果たしたことで反対に新興・途上国においてはネットへの規制や政府のネット管理、ネット検閲がさらに強化されることになった。最近では韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権もネット検閲に乗り出そうとしている始末だ。

 米中央情報局(CIA)元職員のスノーデン容疑者による暴露はこのような流れを決定づけた。ネットが自由で国境のないものだとする裏側で、米国家安全保障局(NSA)はグーグルやアップルといった米国主要IT企業の協力の下、無制限で無差別な情報収集と市民監視を世界中で行っていたのである。そしてこのような米国の偽善性が明らかになった後もNSAの姿勢は基本的に変わっていない。この結果、サイバー空間が世界の共有地(グローバルコモンズ)となるどころか、各国が国境を設け自らの権利を守るバルカン化へと進んでいるのである。

 特に最近はこれまで米国と足並みをそろえてきた欧州連合(EU)が自らの地域的権益を守るためにからめ手から攻勢をかけている。既に個人情報保護の「指令」から「規則」への改訂にあたって、EUは個人データ保護の強化で米国を牽制(けんせい)し、最近その過程で「忘れられる権利」をめぐって、また検索市場の独占分割問題でもグーグルと代理戦争を繰り広げている。

 ◆根深い欧米の対立

 文化面でもEUは古今東西すべての書籍をデジタル化し検索可能にするグーグルブックス構想に対し、米国を中心にした文献提供の独占化であり、オンライン文化帝国主義だと批判して独自の「ユーロピアーナ」巨大電子図書館を立ち上げ、地域の文化権益を守ろうとしている。

 一方、ビッグデータをめぐっても「個人が特定できない匿名化データは活用する」という認識は日米欧で共通するものの、企業の自主規制に委ねる米国と、個人のプライバシーのルール化を重視するEUの間には根深い対立が存在する。

 他方、ネットにすべてのモノがつながる「モノのインターネット(IoT)」の先駆けとして自動車業界にグーグルとアップルという米2大IT企業が本格的な参入を表明した。いずれも車載情報端末を自社OS(基本ソフト)で行おうとするもので、車載情報端末を独自開発しているトヨタ自動車やホンダと対抗することになった。

 わが国でもサイバー基本法が成立されるなどサイバー攻撃への対応は着々と進んでいるが、以上のように国際秩序が変化し、さらに実社会と一体化するサイバー空間にあって、外交的にも米国追従といわれぬよう国家主権を毅然(きぜん)として守っていく姿勢を示し、プライバシーも含め国民の権利や利益をいかに守っていくかを戦略的に考えなければならないときが来ているように思われる。

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【プロフィル】原田泉

 はらだ・いずみ 慶大大学院修士修了。日本国際貿易促進協会などを経てNEC総研から国際社会経済研究所へ。現在同主幹研究員。早稲田大学非常勤講師なども務める。58歳。東京都出身。

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