ニュースカテゴリ:政策・市況
国内
15年度予算案 「踏み込み」で分かれる見解 エコノミスト採点
更新
片山善博慶大教授 14日閣議決定した2015年度予算案について、政府は経済再生と財政健全化の両立を図る予算だと強調した。これに対し、エコノミストの間では、アベノミクス効果を評価する声が出る一方、中長期の財政健全化に向け、社会保障分野などへの切り込みが不十分と指摘する厳しい見方が交錯した。
合格点の70点と評価したのは明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミスト。「アベノミクスで税収が増え、新規国債発行額を抑えた点は評価できる」と話す。60点だが、合格水準とした大和総研の熊谷亮丸執行役員チーフエコノミストも「税収増で余裕を持って組めた予算で、法人税減税にも踏み込んだ」と評価する。
ただ、社会保障分野については見方が分かれた。小玉氏は介護報酬の2.27%引き下げを評価したのに対し、熊谷氏は「過去最大の下げ幅になるのを嫌った結果、踏み込みが不十分」と分析する。
一方で、日本総合研究所の河村小百合上席主任研究員とSMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは厳しい評価を下した。
宮前氏はその理由を「消費税の再増税を先送りしたのに、増税時にやる施策を一部前倒ししている」と財政規律の緩みを指摘。河村氏は「日銀の金融緩和で低金利となり、国債の利払い費が抑えられているが、こうした状況は長く続かない」と強調した上で2020年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を達成するため、抜本的な歳出歳入改革も含めた工程表の作成が必要だと提言した。
■エコノミストによる2015年度予算案の採点
(採点/コメント)
◆明治安田生命保険・小玉祐一チーフエコノミスト
70/予算総額は過去最高となったが、歳出の伸びを抑え、公債依存度を引き下げた点は評価
◆大和総研・熊谷亮丸執行役員チーフエコノミスト
60/アベノミクス効果で余裕をもって組めた印象だが、既得権が強い聖域には踏み込めず
◆日本総合研究所・河村小百合上席主任研究員
60/中長期の財政健全化から見て、税収増に助けられ何とか最低限のラインは守れた印象
◆SMBC日興証券・宮前耕也シニアエコノミスト
55/経済再生と財政健全化を両立させているように見えるが、歳出増への切り込みは不十分
※点数は100点満点
≪識者談話≫
□片山善博慶大教授
■地方の地力培われる政策を
地方財政計画では「まち・ひと・しごと創生事業費」として1兆円の予算が計上されたが効果は未知数だ。財源に多少の手当てをしたに過ぎず、自治体が何に財源を使うかが問題。イベント開催など、一過性のものでお茶を濁さず、地方の地力が培われる政策をやってもらうことが必要だ。
これまでも、若者向けの雇用を生み出す基金を作るなど、政府の資金を地方が活用する政策はあったが場当たり的。結局、地方に一生を捧げようとはならなかった。また、域外に売るモノより燃料など域外から買うモノの方が多く、経済に重要なカネと人が出て行くのが地域経済の問題だ。
その意味で、予算案のうち、農業生産者が加工までを手がける6次産業化の推進は有効だ。今は重くて安いものを売っているところに、小ぶりで高付加価値な商品として売るからだ。課題は、自治体トップの裁量に格差があること。予算は執行に向けた手法が重要だ。自治体がじっくり住民と話し合い、考える力をつける下地から作る必要がある。
□田中秀明明大教授
■国債発行減少に一定の評価
国債発行額が前年度当初予算から4兆円以上減少し、6年ぶりに40兆円の大台を割り込んだことは一定の評価をしていい。ただ、景気の循環で税収が増えたことの寄与が大きく、その景気循環もアベノミクスによって生み出されたかは不明だ。
消費増税を除けば、どれだけ政府の努力で国債発行を減らせたのか予算案からは見えてこない。税収を上げて国債発行を減らし、歳出も社会保障費の増加を1兆円程度に抑えつつメリハリをつけてときれいな数字が並ぶが、もっと社会保障費の切り込みに努力してしかるべきではなかったか。
また介護報酬は少し削ったが、年金、医療、介護の抜本的な制度改革が必要。官邸が強い今こそ改革のチャンスだ。
2015年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を国内総生産(GDP)比で10年度から半減させる目標は達成できるようだが20年度の黒字化は遠い。政府は今夏まとめる新たな財政健全化計画で、長期見通しを常に作成しつつ目標との乖離(かいり)を検証して対策を講じる枠組みをつくるべきだ。