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与党巻き返し、歳出改革は後退 来年度予算案96兆3420億円を閣議決定
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2015年度一般会計予算案 政府は14日、一般会計の歳出総額が過去最大の96兆3420億円となった2015年度予算案を閣議決定した。昨年4月の消費税率引き上げや法人税収の伸びにより、税収は24年ぶりの高水準となる54兆5250億円を見込む。新規の国債発行額は36兆8630億円で、前年度から4兆円超の大幅減。自治体が自由に使える1兆円の歳出枠を創設し、安倍晋三政権が重視する地方創生を後押しする。
政府は9日に決定した14年度補正予算案(3兆1180億円)と合わせ、3年連続となる100兆円規模の財政出動により、経済成長に伴う税収増を財政再建につなげる道筋を描く。
歳入総額は、税収や日銀納付金などの税外収入が伸び、59兆4790億円。歳入に占める借金の割合を示す公債依存度は38.3%で、当初予算では09年度以来の30%台に低下した。
政策経費は過去最大の72兆8912億円。これから歳入総額を引いた、財政の健全性を示す基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の赤字幅は前年度予算から4兆円超縮小し、約13兆4000億円。PBの対国内総生産(GDP)比の赤字を10年度から半減させる政府目標は達成できる見通しだ。
例年、予算づくりは、秋から年末にかけて官邸と与党、財務省が激しい網引きを繰り広げる。だが、今回は昨年12月の衆院選で与党が大勝した直後から本格化し、日程が窮屈になった影響で、作業は終始官邸のペースで進んだ。
財務省は、PB赤字の半減目標を達成するという官邸の指示に応えるなど、“黒子役”に徹した。国民に消費税再増税を約束した安倍首相の政権基盤が揺らげば、消費税率の引き上げがほごにされる可能性があるからだ。
「96兆3000億円台でまとめてください」。予算編成作業が大詰めを迎えた今月10日、首相官邸は財務省に予算規模を指示した。昨年12月の衆院選後から調整が続いていた総額が固まった瞬間だった。
官邸には、15年度予算案で財政健全化への姿勢を示し、消費税再増税の延期で揺らぎかけた日本の財政への信認を万全にする狙いがあった。財務省主計局幹部は「(目標の)達成はぎりぎりだった」と胸をなで下ろした。
一方、歳出削減の最大の焦点だった介護報酬改定で、財務省は大幅な譲歩を強いられた。
財務省は介護事業者の利益率が平均8%なのに対し、事業規模が同程度の他の産業の中小企業の約2%と比べ高収益である点を問題視。特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人が2兆円の内部留保を抱えるなど、介護事業者の“もうけすぎ”の実態を強調した。
介護報酬を1%引き下げると税金(国・地方分)520億円、保険料410億円、利用者負担70億円の計1000億円の支出が減る。財務省はこれを「国民負担が軽くなる」と与党に説明して回り、9年ぶりのマイナス改定、さらに過去最大の下げ幅(2.4%減)を上回る4%減を目指した。
昨年11月、安倍首相が消費税再増税延期を決断し、財源が厳しくなったことも財務省には追い風に見えた。「4%減なら完勝、2%台の減ならボロ負けだ」(同省幹部)と軽口をたたく余裕さえあったほどだ。
だが、昨年12月の衆院選後、情勢は一変する。介護報酬の大幅な減額に対し、民主党や共産党から「介護現場が崩壊する」などと批判が続出。今年1月7日、自民党の社会保障に関する特命委員会では「マイナス改定で政権を倒したいのか」などと怒号が飛び交った。8日には田村憲久前厚生労働相ら自民党“厚労族”議員が麻生太郎財務相に報酬の大幅減額をやめるよう求めた。9日、安倍首相と麻生財務相が会談し、2.27%減で決着した。
安倍政権は今月召集の通常国会で、15年度予算案成立を目指すとともに、集団的自衛権の行使を容認する安全保障法制関連法案の成立に全力を挙げる考えだ。土壇場で介護報酬の大幅減が回避されたのは、国会で「野党攻撃の格好のネタにされる」(政府高官)のを避けるためだ。4月に統一地方選を控え、国会審議が停滞して予算案の今年度内成立が大幅にずれ込めば、景気回復に水を差すおそれもあった。
財務省の譲歩はこれだけにとどまらなかった。地方財政計画でも、地方創生に向けた自治体の具体的な計画がないまま、地方が自由に使い道を決められる1兆円の新たな歳出枠が確保された。
リーマン・ショック後の危機対応として地方交付税に上乗せしてきた「別枠加算」(6100億円)も財務省は即時廃止を求めたが、3800億円の減額にとどまった。
教育予算でも焦点だった幼児教育無償化の実施は見送ったものの、幼稚園に通う3~5歳児がいる一部世帯への補助金を前年度比52億円増とした。教育・科学予算は全体で前年度比700億円減となったのと比べ大盤振る舞いだ。一方、児童・生徒数の減少率に合わせた教職員定数の合理化や、他の公務員より年8万円高い教職員給与の優遇分解消など、合理化策はことごとく退けられた。
歳出改革は、与党の猛烈な巻き返しを受けて後退した。与党の歳出圧力に対し、財務省は予算の帳尻合わせに終始し、財政健全化の本筋である政策効果の検証や予算の効率化は手つかずのままだ。消費税再増税の実現という財務省の“野心”と引き換えに、歳出の抜本改革が後手に回り、国民負担だけが増えるのであれば、本末転倒もはなはだしい。(小川真由美、尾崎良樹)