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海外情勢
地方製油所に輸入原油の使用権開放 発改委通知 国有大手の寡占打破へ
配信元:中国新聞
更新山東省煙台市の竜口港では、タンカーでロシアから到着した石油の荷降ろし作業と船舶安全検査を同時に実施。停泊時間を短縮できるようになったという(中国新聞社) 中国国家発展改革委員会(発改委)はこのほど、「輸入原油の使用管理問題に関する通知」を発表し、今後、条件に適合する地方の製油所に対し、一定規模の旧式設備を閉鎖するかまたは一定規模のガス貯蔵施設を建設することを前提に、輸入原油の使用を許可することを明らかにした。これにより、石油・ガス改革による「寡占状態打破」は加速し、地方製油所が訴え続けてきた原油不足の問題が解決に向かうことになる。
◆民間企業に初めて
今回の措置は、旧式設備の閉鎖と製油所全体の高度化を進めて政府の環境保護政策に適合させることを目的としており、「通知」の中で、民営企業に対して輸入原油の使用権開放を初めて明言。新たに使用権を取得する企業の製油量は、その企業が閉鎖した設備の生産能力と建設したガス貯蔵施設の比率によって決定し、その上限は条件に適合する常圧蒸留装置・減圧蒸留装置の総加工能力とし、旧式設備の閉鎖確認の検査手順も定めている。
化学製品・エネルギーの市況情報大手ICIS傘下、安迅思息旺能源の燃料油アナリスト、陸暁旭氏は本紙(経済参考報)の取材に「地方の製油所にとって今回の通知が規定する基本条件は対応しやすいもので、努力すれば達成できる範囲。将来的には多くの地方製油所が輸入原油の使用権を取得するだろう」と指摘。ただ、現段階で条件を満たすのは15~20社ほどにとどまり、条件に適合した製油所のM&A(企業の合併・買収)が進む可能性もあるという。
今回の通知のより大きな意義は、寡占状態を打破することだ。中国石油大学石油・ガス産業発展研究センターの董秀成主任は「石油市場が全体的に競争力をつけなければ原油の調達先の多様化は実現せず、今回の改革で中国が地方の製油会社の原油調達問題において実質的な一歩を踏み出した」と評価する。
中宇資訊のアナリスト、張永浩氏は「政府による石油製品市場化推進に向けた措置の一環であり、地方製油企業の原油不足問題解決につながるうえ、中国の原油使用量も拡大するだろう」としながらも、「今回の措置は原油輸入権の開放と両方実現してこそ意味があるもの」と指摘する。
◆輸入権は認められず
実際、今回認められるのは原油の使用権であり、輸入権ではない。このため地方製油所は輸入原油を調達するために、中国石油天然ガス集団(CNPC)傘下の中国聯合石油や、中国石油化工集団(シノペック)傘下の中国国際石化聯合(ユニペック)、中国海洋石油(CNOOC)、中国中化集団(シノケム)、珠海振戎の5社を通じて輸入しなければならない。シノペックやCNPC、CNOOC、シノケムといった国有企業大手が輸入を制御しており、認可されている民間企業は20社余りにとどまっている。
とはいえ、市場関係者の間でも地方製油所への輸入権開放には否定的な意見もある。
化学メーカーの中国化工集団(ケムチャイナ)が2013年に1000万トンの輸入枠を取得して以来、費用対効果の高い国産の原油が地方製油所の原料市場に大量に流入し、輸送コストを加えた輸入原油精製の利益率は国内産を下回ることになった。
また、地方製油所は計画性が乏しく目先の利益を追求することが多いことも問題だという。調達から加工までの周期が長くなる輸入原油は、価格変動で長期間にわたり巨額の損失を被ることもあり、地方製油所には持ちこたえられないからだ。(経済参考報=中国新聞社)