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海外情勢
乳幼児用粉ミルク市場、実質ゼロ成長に 高級ブランド順調、中小低迷で二極化
配信元:中国新聞
更新広東省広州市の輸入品販売店でイタリアブランドの粉ミルクを手に取る女性たち。中国の粉ミルク市場は、高級品と普及品の二極化が顕著になってきているという(中国新聞社) 中国の乳幼児用粉ミルク市場について、米市場調査会社ACニールセンが作成した2014年のシェアランキングが発表された。ベビー用品店やスーパーマーケットなどの販売ルートにおけるランキングでは、上位10位のうち国内ブランドと外国ブランドが初めて同数となった。
業界専門家によると、14年の粉ミルク販売量は全体的に減少。売上高では4.2%増だったが、例年の10~20%増という数字に比べると、インフレ要素を除けばほぼゼロ成長といえる。「08年に起きた有害物質メラミン混入事件以降で最悪の年だった」と同専門家は話す。
◆外資シェア低下
ランキング上位3社はスイスの食品大手ネスレ傘下のワイス、米ミード・ジョンソン・ニュートリション、貝因美嬰童食品。13年にニュージーランド乳業大手フォンテラの乳製品がボツリヌス菌に汚染されているとして世界中で製品回収(リコール)が相次いだ問題の影響を受け、(原材料を同社から仕入れていた)仏ダノン傘下のデュメックスは前年の5位から10位に転落。代わって中国企業の黒竜江飛鶴乳業がランクインした。
このほか内蒙古伊利実業集団(伊利)や広州市合生元生物制品(合生元)、雅士利国際集団(雅士利)が10位以内に入っている。
市場占有率でみると、実店舗における外資系粉ミルクのシェアは下降している。13年に上位10位に入った外国ブランドのシェアは計約46%だったが、昨年には約41%に減少。一方、10位以内の国内ブランドのシェアは13年の28%から約30%に上昇している。
ゼロ成長の原因について、この専門家は、一人っ子政策緩和の影響がまだ現れていないことや、主力市場である都市部で母乳育児の比率が急増していることを挙げている。
◆販促費かさみ
業界不振の状況は、一部の企業の業績報告からも明らかだ。
貝因美がさきごろ発表した14年の業績速報によると同社の総売上高は前年同期比17.24%減の50億6200万元(約985億円)、営業利益は88.88%減の1億400万元だった。上場企業の株主に帰属する最終利益は90.89%減の6567万7700元にとどまった。同社は、大幅な利益減は売上高の減少とコスト高によるものと説明している。
雅士利は今年1月時点で、14年の最終利益が40%減少する予測をすでに発表していた。これは同社にとって過去にない大幅下落となる。
ある粉ミルク販売業者は「いまや業界の二極化は明らかだ」と指摘。高級ブランドは日増しに業績を上げる一方で、中小ブランドは一層の低迷に陥っている。ワイスのシェアは13年には1.8%だったが、昨年は2.9%に伸びた。だが(福建省の)明一嬰幼児栄養品のような地域ブランドは、販売量が3分の1も落ちているという。
上記の専門家は「業界不振は生産能力の過剰や在庫過多と無関係ではない」という。昨年、業界各社は相次いで生産能力を拡大し、在庫は例年よりも増えた。多くの企業が在庫圧縮と販促に力を入れているが、通年の販売目標を達成できていない。
貝因美が業績不振の原因とするコスト高も、長期的な販促活動によるものだ。在庫圧縮のため末端市場で大量の販促を行ったことで、コストが最終利益に影響した。加えて全商品で値下げを行ったため、販売店側の販売への積極性が減り、売り上げに響いたという。
ある販売業者は「今年は二極化がさらに進む」と予測している。高級ブランドは引き続き高級路線を行き、中小ブランドは販促の末に値下げに走るが、中小のシェアは小さいため、業界への値下げの影響は少ないという。(羊城晩報=中国新聞社)