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【日米首脳会談】TPPで対中包囲網 AIIB警戒感で一致 首相「恣意的な思惑に左右されない」
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28日の会談で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の早期妥結に向けた連携を確認した日米両首脳は、国際的な通商秩序の構築で中国に主導権を渡したくないという思いを共有している。両国は中国が年内の設立を目指すアジアインフラ投資銀行(AIIB)への警戒感でも一致しており、「中国包囲網」の連携を進める。
「アジア太平洋諸国に、いかなる国の恣意(しい)的な思惑にも左右されない、フェアでダイナミックで持続可能な市場をつくりあげなければなりません」
安倍晋三首相は29日の米上下両院合同会議での演説で、こんな言葉を使ってTPP交渉の早期妥結を呼びかけた。「恣意的な」との表現が、中国を念頭に置いているのは明らかだ。
オバマ米大統領もこれまで何度も、TPPが合意に至らなければ「中国が中国に有利なルールを書くことになる」と警戒してきた。TPPの対中国としての意味合いは鮮明化している。
両首脳はAIIBへの対応でも足並みをそろえた。安倍首相は28日、オバマ氏との共同記者会見で「AIIBには公正なガバナンス(組織統治)が必要だ」と強調。オバマ氏も「まさに安倍首相が言った通りだ」と応じた。
両首脳は中国の経済発展を歓迎するとしているが、既存の世界経済体制への挑戦ともいえる中国の存在感拡大を無視できないことは間違いない。
日米両国は19~21日、東京都内でTPPの日米閣僚協議を開いた。この場では、日本のコメや米国の自動車部品の関税の扱いで依然隔たりがあり、決着を持ち越したが、安倍首相は議会演説で、「日米間の交渉は、出口がすぐそこまで見えている」と強調した。
両国は、来年に次期大統領選を控える米国の政治日程をにらみ、5月下旬から6月には参加12カ国の閣僚会合を開き、交渉全体の合意にこぎ着けたい考えだ。限られた時間で、交渉に終止符を打つには、会談で日米両首脳が確認した通り、両国の連携が不可欠になる。(本田誠、ワシントン小雲規生)