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二条城前の超一等地、マンションよりホテルを…京都市長が「阪急」に異例の“嘆願”

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二条城前の超一等地、マンションよりホテルを…京都市長が「阪急」に異例の“嘆願”

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昨年12月26日で営業を終えた京都国際ホテル。跡地の活用をめぐって古都が揺れている=京都市中京区  世界遺産・二条城前のホテル跡地という京都の「超一等地」の活用をめぐって、京都市の門川大作市長が、開発会社に対し「ホテルを誘致してほしい」と呼びかける異例の事態に発展している。円安を追い風にして、京都は外国人観光客が急増しているものの、宿泊施設が不足しているという事情が背景にある。土地利用の方法について開発会社側は明らかにはしていないが、「富裕層向けに需要が高まっているマンション開発をするのではないか」とする憶測もあり、関係者の注目が集まっている。(吉国在)

 要望書に「ご英断を」

 跡地は、二条城(京都市中京区)から堀川通を挟んで東側にある約7500平方メートル。昨年12月に閉館した京都国際ホテルがあった場所で、駅が近く、行楽シーズンには大勢の観光客が訪れる。平安時代には、貴族の邸宅である堀河院があり、江戸時代に福井藩邸も置かれていた。

 市の幹部は「歴史があり、世界遺産の二条城が望める絶好のロケーション。市内でも数少ない超一等地」と話す。

 京都国際ホテル跡地の土地と建物は売却され、阪急阪神ホールディングス(HD)傘下で、マンション開発大手の阪急不動産(大阪市)が取得した。

 門川市長はこの情報に敏感に反応。要望書を阪急HDと阪急不動産に提出し、両社に宿泊施設の誘致を強く働きかけた。ホテル跡地にマンションが建つのではないか、という危機感があったのだ。

 門川市長が出した文書には、ホテルの跡地を「絶好のロケーションで国内外のお客さまをもてなすのに最高の条件がそろっている場所」とした上で次のように記されていた。

 「世界の人々をこれまで以上に呼び込むためにも市内で不足している国際観光都市としてふさわしいホテルの誘致を切望する」

 「市だけでなく、わが国の観光振興、国際理解の振興のためにもご英断を」

 市長が土地活用について民間企業に対し、要望を行うこと自体が異例だが、「ご英断を」という言葉からも、その強い思いが伝わってくる。

 京都はホテル不足

 市がホテル誘致に執着をみせるのは、平成25(2013)年に過去最高となった外国人宿泊客約113万人を、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに年間300万人に増やす目標があるからだ。

 「昼は京都で観光、夜は大阪で宿泊」

 京都市は長年にわたり、こんな言葉で、宿泊施設の不足を揶揄(やゆ)されてきたという。

 しかし、京都市内では近年、外資系を中心にホテルの進出が相次いでおり、宿泊地としての魅力も広がってきている。

 昨年2月、鴨川沿いのホテルフジタ京都の跡地に外資系高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン京都」(京都市中京区)がオープン。今年3月には、森トラスト(東京都港区)が京都・嵐山に和風の高級ホテル「翠嵐(すいらん)ラグジュアリーコレクションホテル京都」(同市右京区)を開業した。

 さらには、カナダのフォーシーズンズ・ホテルズ・アンド・リゾーツや、西日本鉄道(福岡市)の「ソラリア西鉄ホテル京都」(同市中京区)が、いずれも来年開業を予定している。

 ただ、観光政策に関わる市幹部は、それでも「目標達成にはホテルの数がまだ足りない」と打ち明けるのだ。

 この市幹部は、二条城前の跡地について「市内であれだけ好条件のそろった土地が市場に出るのは非常に珍しい。ぜひホテルをお願いしたい」と語る。

 親しまれていたホテル

 京都国際ホテルは昨年12月に営業を終え、53年の歴史に幕を下ろした。昭和36年の開業で、二条城の東側という立地の良さが人気で多くの観光客に愛されてきた。

 藤田観光(東京都文京区)の100%子会社が運営し、ここ数年は黒字経営だった。ただ、建物の老朽化が激しく、耐震工事などの投資に見合う資金回収のめどが立たないことなどを理由に営業終了を決めたのだという。

 昨年12月26日の営業最終日。従業員約40人がホテルの正面玄関に整列し、チェックアウトを終えた宿泊客ら一人ひとりに「ありがとうございました」と声をかけていた。涙ながらに従業員と握手したり、写真を撮影したりする常連客の姿もみられた。

 常連客らは「温かいもてなしが印象的なホテルだっただけに残念」と名残惜しそうだったが、親しまれていたホテルの跡地だからこそ、関係者たちも「ホテルが根付きやすい」と期待を寄せる。

 「あらゆる可能性検討」

 一方、土地建物を取得した開発会社の側にもそれなりの思惑があったはず。活用方法についてはまだ明らかになっていないが、マンション開発会社が土地建物を取得したことで「マンションになるのではないか」という憶測が広がる。

 京都市内では今、大手不動産会社による分譲マンションの建設や販売が活況を呈しているのだ。

 円安や株高を背景に、中国など海外や首都圏の富裕層が別荘や投資目的で購入する事例も増えているという。

 例えば、野村不動産(東京都新宿区)が昨秋に販売した京都市中京区の御池通沿いの富裕層向けマンション。地上10階地下1階建ての全43戸で、価格は6900万~1億4千万円という“億ション”だが、来年3月の完成予定を前に既に完売しているという。

 不動産経済研究所によると、平成26年(1~12月)の近畿2府4県の新築マンション発売戸数は前年比24・8%減と大幅な落ち込みを記録しており、マンション販売自体は低調だ。ただ、京都市内については、発売戸数は9・1%減にとどまり、ここ5年でピークだった25年の水準を維持している。

 同研究所の担当者は「京都市中心部のマンションは海外の富裕層らが別荘や投資目的で買い求めるケースが増えてきており、根強い人気がある」と話す。

 阪急不動産は「ジオ」などのブランドで阪急沿線や首都圏を中心に、主にファミリー世帯向けのマンション開発を手がけている。

 同社総務人事部は、跡地活用の方向性について「取得したときから、あらゆる可能性を含めて検討している。跡地をどうするかについて現段階では一切答えられない」とコメントしている。

 富裕層向けマンションか国際観光都市にふさわしいホテルか…。古都が誇る超一等地の未来はどうなるのか、目が離せない。

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