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【論風】日本の安全保障への提言 海外企業買収で防衛産業強化

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【論風】日本の安全保障への提言 海外企業買収で防衛産業強化

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元米国務省国務次官補代理スティーブン・ガンヤード  □米アヴァセント・インターナショナル社長(元米国務次官補代理) スティーブン・ガンヤード

 安倍晋三首相は日本の指導者として過去に例のない変化を目指している。防衛や安全保障面の役割拡大もその一つだ。安倍首相は日本だけでなくアジア全体の利益を守り、規範に則した国際秩序を強化するために、日本が主導的役割を果たすべきだと考えている。

 ◆中国の能力に後れを取る

 ただ、現在の日本は物理的な防衛力の取得で他国に過剰に依存している。数少ない日本の国産装備はどれも世界的水準だが、困ったことに、その多くは質量ともに中国の能力に後れを取りつつある。大幅な防衛費増加が見込めない中、日本の防衛産業が中国のような増大する脅威を抑止する新たな能力を開発できる可能性は極めて低い。

 それでも、強固な防衛産業基盤をベースに戦略的抑止を構築する別のアプローチがある。これにより日本は、費用を全くかけることなく、世界規模の国防産業としての地位を、いわば「買い取る」ことができる。それは、企業の吸収・合併、そして国防関連の知的所有権購入というアプローチだ。

 このような状況の中、日本企業の経営者の大多数は昨年、「武器輸出三原則」に代わる「防衛装備移転三原則」が制定され、輸出規制が緩和されたにもかかわらず、防衛部門を「政府に管理されている事業部門」とみなしてきた。防衛装備の輸出や投資に関する明確な政策がない現状では、投資や事業拡大のリスクに見合う経済的見返りはほとんど見込めない。

 幸い、キャッシュフローに問題がない現在の日本企業には、買収を通じ部門拡大を図るという、費用対効果の高い手段がある。日本は企業の買収や提携を通じ、国際競争力を持つ防衛産業基盤構築に必要な知的所有権や製造規模を世界規模で作ることができるという非常に恵まれた立場にあるのだ。

 国際規模の防衛企業を取得する利点は明確だ。ハイテク企業自体は海外に置いたままでかまわないが、その企業が持つ技術そのものは日本が利用できる知的所有権の一部になる。サイバーセキュリティー、指揮通信、監視、電子機器、無人機などの最先端の事業セクターの基盤を世界中に持っておくことは、防衛部門だけでなく、公共部門の技術や産業基盤にも利益になる。

 ◆国際協力銀行を活用

 企業が買収などのアプローチを積極化するには、政府が2段階で環境を整備する必要がある。第1に必要なのは、安全保障政策に基づきながら輸出や投資に関する指針を盛り込んだ明確な防衛産業政策の策定だ。さらに日本企業が防衛・安全保障分野の最先端事業を持つ企業を買収しやすくするため政府が買収リスクを共有することだ。

 具体的にどんな技術を買収の標的にするかは、日本が直面する脅威や地域の安全保障の中で日本が果たすべき役割などを考慮し、詳細な戦略的評価に基づき決めるべきだ。こうした評価により、鍵となる能力や技術の取得を支援する防衛産業政策を策定できる。

 第2のステップとして、日本の防衛企業の経営層のためらいを克服するためには、日本政府自ら積極的にリスク緩和に関与すべきだ。融資保証、デフォルト(債務不履行)からの保護、有利な条件での融資など、さまざまな方法があるが、こうしたスキームはすでに国際協力銀行(JBIC)が持っている。JBICに日本の安全保障政策や防衛産業基盤を資するような外国企業の買収支援を明確な職務として付与することも可能だ。

 日本は今、米国に過剰に依存することなく地域安全保障の中でより大きな役割を果たし、自国の安全保障上の脅威に対峙(たいじ)することを目指すという歴史的な転換点に来ている。しかし、この目標を達成するためには、新しいイニシアチブが必要になろう。国家戦略上の目標を支えるような明確な防衛産業政策を確立し、海外企業の買収に乗り出しやすくなるような、また、官民が互いに扶助し合うような枠組みを構築しようとする過程の中で、日本政府と日本の産業界は、日本の安全保障を強化するために協力することができる。

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【プロフィル】スティーブン・ガンヤード

 米ノース・ウェスタン大卒。米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院(SAIS)修了。米海兵隊パイロット、米国務省国務次官補代理(計画、プログラム、運営担当)を経て現在、米コンサルティング会社アヴァセント・インターナショナル(ワシントン)社長。米ABCテレビのニュース番組でコメンテーターも務めている。57歳。カリフォルニア州出身。

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