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指定廃棄物処分場の設置進まず 福島第1原発事故 自治体の反発強く 

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指定廃棄物処分場の設置進まず 福島第1原発事故 自治体の反発強く 

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 東京電力福島第1原発事故で発生した指定廃棄物の処分場の設置が、事故から4年3カ月たっても一向に進まない。環境省は、福島県と周辺の宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の5県で平成26年度末までに処分場の確保を目指していたが、候補地を提示するたび自治体が反発するなど埒があかない。選定方法の透明性に問題があるとの指摘もあり、情報の開示や支援策の拡充など、国には柔軟な対応が求められている。

千葉市「納得できず」

 「なぜ選ばれたのか、納得できない」。千葉県内で発生した指定廃棄物の処分場の候補地に選定された千葉市の熊谷俊人市長は10日、環境省の小里泰弘副大臣を訪問し、選定のやり直しを求めた。

 同省は、県内の683カ所を対象に水源との距離や、廃棄物の量などを考慮して処分場の候補地を検討。今年4月に千葉市中央区の東京電力火力発電所内の土地を提示したが、千葉市議会は今月8日、国に再協議を求める決議案を可決した。

 熊谷市長は選定プロセスの一部が公表されなかったことについて「なぜ県内で最も保管量が少なく、人口の多い千葉市なのか。情報が十分に示されていない」と注文を付けた。

 環境省は、近く千葉市の住民らに対する説明会を開き理解を求めたい考えだが、地元から再協議の要望が出されたことで難しい判断を迫られている。

うねる反対運動

 他の4県も同様の事態に陥っている。国が初めて候補地を提示したのは24年9月。根回しもなく、いきなり栃木県の処分場に矢板市の国有林野を指名した。同月内には茨城県で高萩市を選定した。

 だが、地元の反対運動のうねりが広がり、住民説明会の実施もままならず、白紙撤回を余儀なくされた苦い経験がある。このため、国は遅まきながら25年2月、各県で市町村長との協議の場を設けて意思疎通を図り、専門家による評価も踏まえて候補地を提示する新たな方針を示した。

 宮城県では3カ所を候補地として詳細調査に入ったが、地元の反発でボーリングなどの本格調査には移行できていない。栃木県では、新たに選定された塩谷町の住民による激しい反対運動が繰り広げられ、調査実施の見通しは立っていない。茨城、群馬両県では、候補地の提示すらできていない状況だ。

福島で国有化、支援策も

 こうした厳しい現状を踏まえ、国は今月5日、福島県内の指定廃棄物の処分について、富岡町内の既存の処理施設を国有化して処分場とする方針を示した。

 「民間への業務委託では安心できない」との地元の声に応えたもので、交付金の創設など地域振興策も合わせて提示し、同町の宮本皓一町長は「国有化は(住民の)安心確保に不可欠」と評価した。

 今後の地元議会への説明や住民の合意形成など課題はあるが、指定廃棄物の保管量が約13万2千トンと最も多い福島県で計画が実現すれば、大きな進展となる。

 一方で、時間の経過とともに指定廃棄物を一時保管している容器の劣化や腐食の不安があり、豪雨や台風などによる放射性物質の飛散のリスクも高まる。

 環境省の担当者は「いずれの地域についても停滞は許されない。可能な限り迅速に、その中でも丁寧に対応していくことで前進したい」と話している。

【用語解説】指定廃棄物

 福島第1原発事故により飛散した放射性物質を含む稲わらや焼却灰などで、濃度が1キロ当たり8千~10万ベクレルのものを環境相が指定する。現在、12都県で一時保管しており、国は福島に加え、廃棄物の量が多かった宮城、栃木、茨城、千葉、群馬の各県に1カ所ずつ処分場を造る方針。環境省は当初、処分場を「最終処分場」としていたが、今年4月に「長期管理施設」と名称変更した。福島で出た10万ベクレル超の廃棄物は県内の中間貯蔵施設に保管し、30年以内に県外の最終処分場に移す。

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