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海外情勢
【ビジネスアイコラム】中国とギリシャの共通点
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■危機招く“不自由な”為替相場制度
国民投票で緊縮財政を拒絶したギリシャと、株式バブル崩壊状態の中国。危機の外見は全く異なるように見えるが、核心部分には共通点がある。
ギリシャ、中国とも国内の経済情勢に対応する柔軟な外国為替相場制度を持たない。経済学では、為替の固定相場制は独立した金融政策、自由な資本移動と併存できないという「不可能な3角形」という定理がある。
ユーロそのものは変動相場制だが、ユーロ圏のギリシャはユーロ相場を決定付ける金融政策をフランクフルトの欧州中央銀行(ECB)の手に委ねている。今回の危機では、同国内から大量の資本逃避が起き、預金封鎖など資本規制に追い込まれた。
ユーロから離脱して旧通貨「ドラクマ」を復活させたとしても、債務危機はもっと深刻になる恐れがある。ユーロ建ての債務負担はドラクマが安くなればなるほど大きくなるからだが、中長期的には経済再生の視界が開けてくる。自国特有の通貨と中央銀行を持っていれば、金融緩和で自国通貨安に誘導し、ただちに主力の観光産業を活性化して国内経済再生に踏み切れるだろう。
中国の場合はどうか。中国人民銀行が日々設定する中心レートの上下2%の範囲内での変動に制限している。公称は「管理変動相場制」だが、実態は準固定相場制だ。今回の上海株暴落の背景には同制度が大きくかかわっている。
中国は2年前から不動産市況の悪化と輸出の伸び悩みで景気が落ち込んでいる。そうなら、通貨安に持っていくのが定石だが、そうはいかない。露骨な為替操作だとして米国が反発して、米議会が対中貿易制裁に踏み切りかねない。さらに、不動産市況の低迷のなかで、資本規制の抜け穴を通じた国内資金の流出に悩まされている。資金をつなぎ止めるためには元相場をむしろ高めに維持する必要がある。景気てこ入れのための残る手段は利下げだが、やり方を間違えると資本逃避を加速させかねない。
北京がとったのは株価引き上げ策である。株高にすれば国内の余剰資金を株式市場に呼び込めるし、今や共産党員数を上回る数の「株民」(個人投資家)を喜ばせ、消費を喚起すると期待できる。人民銀行は昨年11月から利下げし、信用取引資金の供給に乗り出した。党機関紙、人民日報は株高をはやし立てる。こうして株価は急上昇を続けたが、停滞感が強くなる実体景気との乖離(かいり)はひどい。まさしく、株式バブルである。
昨年11月には、香港経由の外国人の上海株投資を解禁した。米国からの金融市場開放要求に部分的に応じたのだが、外国投資ファンドは6月初旬、香港を足場に大量に投機買いして1週間後には売り逃げた。こうして上海株の暴落が始まった。
変動相場制なら、思い切った金融緩和政策に踏み切って、元安に誘導できる。海外の投資家に株式市場を全面的に開放しても、為替変動リスクがあるので、大量の株の投機売買を思いとどまるはずだ。
それでも、党中央は元の管理変動制に固執する。万が一、元が暴落すれば、国内経済は大きく混乱し、党支配体制崩壊につながりやしないかと恐れるのだ。ワシントンもそのことは十分承知で、変動制移行の代わりに元の切り上げを迫る。
さりとて、人民元の人為的安定の代償も大きい。不自由な金融政策と元高のために、不況は長期化し、市場不安は慢性化する。どこに行き着くだろうか。(産経新聞特別記者 田村秀男)