異常事態の連鎖 見えない出口…パンデミック宣言1カ月の世界と経済
米東部ニューヨーク州では医療物資やスタッフの不足が深刻だ。トランプ米大統領は3月27日、国防生産法に基づいて米自動車大手に人工呼吸器の生産を命令。それでも、米国では今月中旬に人工呼吸器2万5千台が不足するとの見方が報じられている。イタリアやスペインも医療崩壊に直面した。伊北部では、生存の可能性が高い患者を優先する「選別」(トリアージ)を余儀なくされている。
他方、中国ではこの間の感染者が約2千人増にとどまっており、「国内での感染流行のピークは過ぎた」(習近平国家主席)とされる。最初に感染が広がった湖北省武漢市では、都市封鎖が8日に解除された。
中国は米ニューヨーク州に人工呼吸器1千台を寄贈、イタリアに医療専門家チームを派遣するなど活発な支援外交を展開。医療物資を援助した国は127カ国に上るとしている。
(遠藤良介、北京 三塚聖平)
【経済】
世界経済は戦後最悪の不況にのみ込まれた。各国は財政金融政策を総動員し、危機の封じ込めに努めているが、感染拡大を防ぐためヒトやモノの動きが急停止し、わずか1カ月でさまざまな需要が“蒸発”。各国の金融市場は記録的な株安に見舞われた。世界全体の経済成長率は急速に悪化し、2020年はマイナスに転落する見通しだ。
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は9日、「世界経済は大恐慌(1929~33年)以来の景気悪化になると予測している」と危機感を訴えた。
IMFが14日公表予定の新たな世界全体の成長率見通しはリーマン・ショック後の2009年(物価変動を除く実質でマイナス0・1%)を下回る見通し。世界大恐慌では失業者が街にあふれ、ドイツでナチスの台頭を招いた。各国は、急速な景気悪化による社会不安拡大を警戒する。
国内でも、外出自粛で宿泊業や飲食業などを中心に幅広い業種の需要が急減。日本経済研究センターがまとめた民間エコノミストの経済見通しでは、実質国内総生産(GDP)成長率は4~6月期に前期比年率11・08%減と3四半期連続のマイナス成長を予測する。
日本銀行が1日公表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の業況判断指数(DI)が7年ぶりにマイナスとなった。
東京商工リサーチの集計では新型コロナウイルスに関連した中小企業の経営破綻が10日に50社を超えた。
主要国は緊急対応でスクラムを組む。米国は家計への現金給付など総額2兆2千億ドル(約240兆円)規模の対策を編成。日本も過去最大となる事業規模約108兆円の緊急経済対策をまとめた。収入減の世帯やフリーランスを含む個人事業主に現金を給付するほか、全世帯に布マスク2枚を配る。(田辺裕晶)
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【パンデミック】
感染症が制御不能な形で世界的に流行している状態。ギリシャ語のパン(全ての)とデモス(人々)を語源とする。世界保健機関(WHO)は3月11日、新型コロナウイルスの感染拡大について、2009年に流行した新型インフルエンザ以来の「パンデミック」にあたると表明した。