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聖地・高野山でWi-Fi完備の“テラワーク” 仕事がはかどる仕掛けとは

 弘法大師・空海が開いた高野山(和歌山県高野町)、標高800メートルの神秘の聖地でテレワークをしてみれば-。高野山の宿坊がテレワークを応援する宿泊プランを始めた。瞑想(めいそう)修行や写経体験、さらに明智光秀ら戦国武将が眠る奥之院をめぐるツアーにも参加が可能という。非日常を楽しみながら、仕事もはかどる、これぞ“テラワーク”。どういったものか、試してみるしかない。(山田淳史)

 Wi-Fi整備

 「テラワークに行ってくれへんかな」

 デスクから突然、指令があった。「テラワーク? テレワークの間違いじゃないんですか」と聞き返すと、高野山の宿坊で、テレワークに適した宿泊プランがあるという。普段は無駄話をしないデスクがダジャレを言うなんて珍しく、「行ってくれへんかな」は「行ってこい」の同義語だ。150行の原稿を書き上げるミッションをたずさえ、8月下旬、潜入取材を試みた。

 テレワークが快適にできるという「高野山恵光院(えこういん)」は奥之院の入り口「一の橋」近くに構える寺院。NHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」の主人公・明智光秀の菩提寺(ぼだいじ)としても知られる。

 「無料で写経や瞑想を体験できます」。午後2時にチェックインすると、マスク姿の役僧、越智安章さん(28)が迎えてくれ、写経用紙を渡された。

 高野山に数ある宿坊の中でも先駆的にインターネット対応の無線LAN(Wi-Fi)環境を整備したという。パソコンやプリンターなどを設置した「PCコーナー」もあり、確かにテレワーカーには心強い。

 新型コロナウイルス感染拡大までは、インバウンド(訪日外国人)の利用が多く、こうした利用者のニーズに応えたという。「英語ができるスタッフも多いですよ」と近藤説秀副住職(37)。高野山ではグローバル化が進んでいる。

 墓地のナイトツアーも

 部屋は8畳の和室。仏画もかけられている。早速、持参したノートパソコンを開き、仕事を始める。窓の外には緑あふれる光景。静かな環境で集中する。日々締め切りに追われる支局の喧噪(けんそう)をしばし忘れる。

 すると突然、携帯電話が鳴った。ネタ元からだ。きな臭い疑惑の話に耳を傾けた。特ダネになればデスクも驚くかもしれない。いけない。取材もしていないのに邪念が生まれた。電話を切り、心を落ち着かせるために庭に出る。本格的な日本庭園で、秋の紅葉など季節ごとの景色も楽しめるとか。穏やかな気分を取り戻す。部屋に戻って「般若心経」の写経も始める。

 「阿字観(あじかん)」と呼ばれる瞑想の時間になり、道場に移動した。大日如来を示す「阿」の梵字をみつめながら瞑想する。越智さんから数息観(すそくかん)といって、自分の呼吸を数えることで心を落ち着かせる方法を教わる。「仏様に身も心も通じ、一体に感じる。瞑想は心を落ち着かせる手段です」。これはいい。働いていれば理不尽な目に合うことも多い。ぜひ試そうと思う。

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