疾風勁草

日本は3度目の核攻撃を甘受するのか 唯一の被爆国が議論すべき“生きる覚悟”

高井康行
高井康行

目を向けるべき厳しい現実

 東西冷戦中にも、アメリカの「核の傘」の実効性に疑問が抱かれたときがある。1977年にソ連が中距離弾道ミサイルSS20を欧州東部に配備したときである。それによって、欧州枢要部は全てSS20の射程圏に入ることになったが、ソ連がSS20によって欧州を核攻撃した場合、アメリカは自国が核攻撃を受ける危険を冒して本当にソ連に核攻撃をするのかという疑問が生まれた。

 その疑問を解消するため、アメリカは1982年、中距離核ミサイルパーシングⅡを欧州に配備し均衡を回復した。そして1987年、米ソの間で中距離核戦力全廃条約が締結され、SS20とパーシングⅡは撤去された。

 これらの事実は、残念ながら、核を抑止するものは核以外にないことを、中華人民共和国からの核攻撃を抑止するためには日本も核抑止力を保有する以外にないことを、教えている。

 唯一の被爆国として、核兵器全廃を目指すことは崇高な理想としては正しい。一方、厳しい現実に目を向け、日本は、唯一の被爆国だからこそ、二度と核攻撃を受けないために核抑止力を保有する権利があると言うこともできる。

 今回の日本への先制核攻撃を主張する投稿は、われわれに、この先も唯一の被爆国として核抑止力を保有せず、中華人民共和国その他の核保有国から3度目の核攻撃を受ける危険、核の恫喝(どうかつ)を受ける危険に晒されながら生きる覚悟をするのか、3度目の核攻撃を受けないため、核抑止力を保有して信頼できる「核の傘」の下で生きる覚悟をするのか、真剣に議論するべき時期が来ていることを教えてくれている。

高井康行(たかい・やすゆき)
高井康行(たかい・やすゆき) 弁護士、元東京地検特捜部検事
1947年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、1972年に検事任官。福岡地検刑事部長、東京地検刑事部副部長、横浜地検特別刑事部長などを歴任した。岐阜地検時代には岐阜県庁汚職事件を、東京地検特捜部時代はリクルート事件などを捜査。福岡地検刑事部長時代、被害者通知制度を始める。1997年に退官し、弁護士登録。政府の有識者会議「裁判員制度・刑事検討会」委員を務めたほか、内閣府「支援のための連携に関する検討会」の構成員や日本弁護士連合会の犯罪被害者支援委員会委員長などを務めた。テレビや新聞でも識者として数多くの見解を寄せている。

【疾風勁草】刑事司法の第一人者として知られる元東京地検特捜部検事で弁護士の高井康行さんが世相を斬るコラムです。「疾風勁草」には、疾風のような厳しい苦難にあって初めて、丈夫な草が見分けられるという意味があります。アーカイブはこちらをご覧ください。

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