専制主義と民主主義が対峙する時代
いずれにしても、日本は、今回選ばれた衆議院議員と来年の参議院選挙で選ばれるであろう参議院議員によって、今後さらに激化していくことが確実な台湾海峡の緊張に対処していくことになる。
アメリカでは、中華人民共和国を抑止するため、具体的には同国のA2AD(接近阻止・領域拒否)戦略に対抗するため、第一列島線に中距離ミサイルを配置することが計画されており、早晩、日本にもその要請がなされるであろう。
かつてのソ連を代表とする共産主義とアメリカを代表とする自由主義とが対峙(たいじ)した時代は、西ドイツがその最前線だった。中華人民共和国が代表する専制主義と米欧日が代表する民主主義が対峙する今の時代においては、好むと好まざるとにかかわらず、第一列島線に位置する日本がその最前線にならざるを得ない。
中距離ミサイルの日本領土内への配備が具体化すれば、国論は大きく割れるだろう。両論を丁寧に聞き、丁寧に説明することはもちろん重要だが、この問題は、丁寧に聞き、丁寧に説明すれば、解決できるようなものではない。
激しい反対運動にもたじろぐことなく、日米安全保障条約を改定し今日の礎を築いた岸信介首相(当時)のような胆力と時代を洞察する力をもった人物が、時の首相を務めていることを願うばかりである。
【疾風勁草】刑事司法の第一人者として知られる元東京地検特捜部検事で弁護士の高井康行さんが世相を斬るコラムです。「疾風勁草」には、疾風のような厳しい苦難にあって初めて、丈夫な草が見分けられるという意味があります。アーカイブはこちらをご覧ください。