Fromモーニングピッチ

スリープテックが「睡眠不足大国・日本」を救う ニューノーマルでも活躍

羽渕麻美
羽渕麻美

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は機器やアプリによって睡眠を支援する「Sleep Tech(スリープテック)」です。

 テーマ概観を説明するのは羽渕麻美です。中央官庁勤務の後、DTVSに参画しパブリックプロジェクトを中心に活動しています。2018年には短期ですがイスラエルのテルアビブ大学にも留学していました。

 皆さまの中にも睡眠時無呼吸症候群など睡眠障害で悩まれている方がいらっしゃると思います。そんな悩みを解決するため、今回の特集とさせて頂きました。今回は海外ベンチャーの事例を中心にお話ししたいと思います。

 日本人の睡眠時間、OECDの平均値を大きく下回る

 スリープテックが注目されている理由は、睡眠と生産性の間に関連性があるからです。例えば1日6時間未満の睡眠が2週間続いた場合、2日間徹夜したときと同等のパフォーマンスしか発揮できないと言われています。日本は残念ながら睡眠不足大国でOECD(経済協力開発機構)の平均値を大きく下回っています。

 また、日本人の5人に1人が睡眠障害に悩んでいると言われています。その要因として指摘されているのが仕事のし過ぎと就寝前のスマートフォンの見過ぎ、ストレスの抱え過ぎです。

 個別の温度制御を行うベッド

 今回はスリープテックの力で睡眠障害を解決するため「睡眠環境の最適化」と「日常行動の最適化」「不眠や睡眠時無呼吸症候群などの治療の最適化」という3つのセグメントに分けてベンチャーを紹介します。

 睡眠環境の最適化で注目されているのがClimate360(米国)のスマートベッドです。1つのベッドですが女性の方は足元を温め、男性の方は肩や腰を温めてくれるというパーソナライズされた温度制御によって眠りにつくのを早めるのが売り物です。電子機器の見本市である「CES2020」では「ベスト・オブ・イノベーション」を受賞しました。

 ユニコーンの仲間入りも

 日常行動の最適化という領域では、瞑想とメンタルヘルスに特化したcalm(米国)の急成長が知られています。提供した瞑想アプリのダウンロード数は5000万に達し、この分野では世界で最も利用されています。また、昨年にはシリーズBラウンドで8800万ドルを調達し、評価額が10億ドル以上で非上場のベンチャーを指すユニコーン企業の仲間入りを果たしました。

 治療の最適化に関する領域では、Onera Health(オランダ)が開発した睡眠時の無呼吸を検知するためのウェアラブル・パッチを紹介します。胸元に貼り付けることで呼吸時の体内電圧を測定し、機械学習によっていつもと異なる電圧を感知、無呼吸と判断できる技術です。ビジネスや技術ニュースの専門サイト「Business Insider」は欧州で最も有望なスタートアップの1社として、同社を取り上げました。

 海外の大手企業とスタートアップによるオープンイノベーションの事例を紹介します。米ユナイテッド航空は、時差ボケ予防アプリを手掛けるタイムシアター(米国)などと提携し、個人に合わせた時差ボケ予防プランを実用化しました。米シューズメーカーのニューバランスは従業員の生産性向上を図るため、イスラエルのベンチャーDayzz(デイズ)社と組んでデジタル睡眠セラピーを提供しています。

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