大丸有スタートアップ・レポート

ヒトが世界と直接つながる IoTのその先「IoP」が拓く未来

万象寛子
万象寛子

 スマホで翌日には口座開設

 同社の生体認証システムはすでに高い評価を得ている。IoT推進コンソーシアム(経済産業省・総務省)の「IoT Lab Selection 第1回先進的IoTプロジェクト選考会議」のグランプリに採択されたほか、独立行政法人中小企業基盤整備機構主催の「Japan Venture Awards 2018」においてもJVA審査委員長賞を受賞した。さまざまな企業・場面において導入が進んでおり、指紋認証を使ったオフィスの入退出セキュリティやカフェやレストランでの支払い決済などは、すでに定着したサービスとなっている。また、これまで本人確認書類の返送など、手続きに時間がかかったオンラインでの証券会社の口座開設も、手元にスマートフォンとマイナンバーカード・運転免許証があれば、同社の技術を使ってオンラインのみで手続きが完結、最短で翌日には取引ができるようにもなった。直近では、ユーザーが企業ごとに行う必要のあった金融機関の口座振り込みや住所変更、行政手続きなどを、スマートフォンからワンストップでできる共通手続きプラットフォーム「AIRPOST」(運営:トッパン・フォームズ)の本人確認にも同社の技術が採用されている。

 服・オフィス・住宅・食品もカスタマイズ

 2020年3月、事業成長と領域拡大に伴い、社名を「Liquid」から「ELEMENTS」に変更した。久田氏は、「これまでは、本人確認など現実の世界でできることをウェブの世界でも当たり前にできるようにとサービスを開発・提供してきたが、これからはデジタルの世界でできることを現実世界でもできるようにして、より社会を便利にサステナブルにするフェーズ」と見据える。

 具体的にはどのようなことか。ウェブやメディアの世界では、ユーザーの検索・購買履歴などをもとに興味・関心がありそうな情報を知らせる「レコメンデーション」機能や、知りたいトピック・情報を整理してまとめる「キュレーション」機能など、“自分に合わせた”情報が集約されていくことが当たり前になってきているが、この“自分に合わせた”状態を、ウェブの世界だけでなく、現実の社会におけるプロダクトやサービスで実現していくことだ。

 例えば、カメラやIoTセンサーで取得した3次元ボディデータを活用して、一人ひとりの好みや体型に合ったカスタマイズされた服がユーザーの手に届くようにする。そうすれば、現在、社会問題にもなっているアパレル業界が抱える課題の1つである「在庫の大量廃棄問題」の解消にもつながる。アパレル在庫の大量廃棄は、コストを下げるために大量生産されたファストファッションの余剰在庫やブランドメーカーの商品価値の保全のため再販や転売抑制など、需給の不一致によるものだが、もし、同社の技術やサービスで衣服の「マス・カスタマイゼーション」が可能になれば、需給の不一致による廃棄問題が解消するばかりか、ユーザーは各々によりフィットした快適な衣服を手にできる。

 「おそらく近い将来、衣服だけでなく、一人ひとりに合った空調・照明・環境のオフィスや住宅、また、アレルギーや嗜好に合わせた食などが提供されていくことになる。マス・プロダクトから一人ひとりに合ったマス・カスタマイゼーションとなれば、廃棄問題や資源の無駄遣いがなくなって持続可能性も高まる」(久田氏)。

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