TMIP通信

東京大学が挑むイノベーターの育成 「数千人のタネは世に放たれた」

ベンチャーを使って組織のOSを変えていく

 投資をめぐっては、まず東京大学エッジキャピタル(UTEC)の坂本教晃氏が「UTECは東京大学の名前が入っているとおり、東大との関係を軸としながら、民間に投資するベンチャーキャピタルとして運営している会社で、優れたサイエンステクノロジー、強力なチーム、グローバルな市場や課題の3つにテーマを絞って投資活動を行なっています。投資先は東大だけでなく基本的にどの大学でも対象となります。大学への寄付や、UTC SOCというコミュニティで投資先の引き合わせもしています」と自社を紹介。「私たちは、『テクノロジーは複数の大学や企業にまたがるもの』という仮説を元に、いろんな国の研究者や技術者を取り込みながら技術を発展させていくことに取り組んでいます」と強調しました。

 東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)の水本尚宏氏も「弊社は東京大学の100%子会社となります。あえてベンチャーキャピタルと言わないのは、既存の枠組みにとらわれない投資をしていこうというコンセプトとなるためです」と説明。その上で、活動の狙いをこう明かしました。

 「立ち位置としては、民間のベンチャーキャピタルや大企業と連携しながら東京大学のベンチャーと取り組みをする組織とご理解いただければと思います。私たちは、新事業を立ち上げるためには、既存事業に最適化された組織のOSを変えていく必要があると考えています。完成された企業ほど、既存の事業にベストフィットしているので、新しいことをしようとしたら組織を変えていく必要があります。その方法としては、ベンチャーを使って新しいOSを外から取り入れることと、新しいOSを外に作ることの2つを提案したいと思っています」

優秀な人材は官僚でなく起業家に

 プレゼンター各氏に、起業に際して東大のエコシステムをフル活用した株式会社estieの平井瑛氏が加わり、TMIPアドバイザーの鎌田富久氏がモデレーターを務めてディスカッションも行われました。以下はそのやり取りです。

 最初の話題は、ウィズコロナで、それぞれの活動が制限されている状況について。

 馬田氏は「コロナの影響で、今後起業する人たちの数が減ってくると懸念されます。その代わり、数が少ない分、今のタイミングで起業すると目立てるというチャンスもあります。オンラインで何ができないのかが見えてきて、オフラインの大切さが改めて見えてきました」と語りました。

 鎌田氏より「1回も会ったことのないベンチャーにオンラインだけで投資できるのか」との質問があり、坂本氏の「全く会わずに投資ということは経験がなく、人柄などを知るために一度は会っておきたい」という発言を筆頭に、他の参加者も皆、オンラインではなく直接会って判断したいと回答。投資される側の平井氏からも、「Zoomだけで面談している相手から投資を受け入れるのも不安」という声が上がりました。

 続いて「ここ数年、東大からスタートアップが増えていることについて、それぞれが感じている理由は?」という質問がありました。

 馬田氏は「スタートアップ業界に関わる人の数が増えたことで、周囲に起業家がいる人も増え、彼らがその影響を受けて自分も起業に興味を持つことも増える、という循環になっているんだと思います」と指摘しました。

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