第3回 事実と意見を分ける<応用演習>
この連載では、子供にロジカルシンキングを教える学習塾ロジムの主宰・苅野進が、SankeiBiz読者のみなさんに、ビジネスパーソンにとって重要なスキルであるロジカルシンキングの基本スキルを伝えていきます。
第3回は、前回の<基本>で扱った「事実と意見を分ける」について、実際に応用問題を解いてみましょう。まずはを復習します。
「事実と意見を分ける」の基本を復習
事実
「このりんごは100円だ」のように正誤判定が可能なもの。間違った事実も、事実のうちです
意見
「このりんごは高すぎる」のように人によって判断が異なるもの
学びのポイント
「意見」に過ぎないものを「正しい事実」のように考えて受け入れてしまうと、検証しようとする意識が疎かになる。意見の通りにならなかった場合のリスクを計算に入れなかったり、対策が不備になったりしまうので大きなトラブルの発生につながります
では問題です。
問題1
「多くの顧客が望んでいる新しい機能について、我が社でも提供すべきだと思う。B社はすでに提供を始めたのだから」
【1】この提案の中の「事実」は何ですか?
【2】この提案の中の「意見」は何ですか?
問題1の解説
「B社はすでに提供を始めた」というのは、客観的で正誤が確認できる事実です。「間違っていた事実」かもしれませんが「事実」です。
「多くの顧客が望んでいる」というのも判断基準が示されていない以上、意見です。「多く」というのはどれくらいの人数なのでしょうか。発言者と聴衆の間に差があるかもしれません。ここを正確に確認しておかないと、実際は1人の担当者がそう感じていただけで、サービスを開発・提供しても売れなかったというようなことになりかねません。
「我が社でも提供すべき」はもちろん発言者の意見です。意見ですので、「本当にそうなのか?」「他に選択肢はないのか?」といった議論に耐えられるような根拠を示す必要があります。
ビジネスの場で「意見」は「事実」より弱いということはありません。最終的にはリスクなど様々な未知の情報を考えに入れて「ある意見」を採用することになるのです。大事なのは「多くの顧客が望んでいる」を何の検証も必要のない正しい事実だと考えて受け入れてしまうことです。
したがって、解答は次のようになります。