大企業や官庁に勤める人たちが「情報弱者」と言われるようになって久しい。かつては大きな組織にいるからこそ、情報が集中して全体がみえた。しかし、情報が分散している現状にあっては、囲いのなかにある大きな組織は逆にそれらの情報に疎遠になってきた。
しかも従業員のソーシャルメディアの利用に制限をかけている企業も珍しくない。ますます「大企業村」から離れた場所のことが見えにくくなる。親が子どもの就職に際して大企業を勧めるのは、それ以外の世界を単に知らないからということもあるだろう。
繰り返すが、大企業そのものの問題点を指摘するのが、本コラムの目的ではない。大企業に勤める親が、自分の子どもにどう多様な道を示せるか。これに尽きる。
その観点でみたとき、大企業に勤める親たちの問題は、社会全体の大きな問題として浮上してくる。どのようにしたら「しぶとい社会」、即ち、子どもたちがさまざまな苦境に直面したときにサバイバルできる術をもっている、という社会が作れるだろうか。
親自身が「大企業村に住むのは楽だ」との意識を、子どものために捨てることからスタートすることかもしれない。
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。