働き方ラボ

痛いこだわり、気づけば閉店 自分探しの終着駅“脱サラ飲食店”はアリか

常見陽平
常見陽平

 その脱サラ飲食店はいつまで続くのかという問題

 SNSのTLで、たまに盛り上がるのが「脱サラ」した元上司・同僚による飲食店の立ち上げのニュースだ。おしゃれバルやカフェ、ダイニングバー、日本酒が揃った創作和食居酒屋など、ジャンルは様々だ。沢山の「いいね」や祝福コメントがつく。私も「いいね」を押し、「そのうち行きますね」と社交辞令を書き込む。たいていは、行かないのだが。

 ふと気づいた。「脱サラ」は昭和的な言葉で、今どきの20代は知らないのではないか、と。サラリーマンを辞めて何かを始めることを指す。ただ、何かビジネスを始める際は「起業」「独立」という言葉を使うが、特に飲食店やお稽古教室などを始める際には未だに「脱サラ」という言葉が使われている。

 誰かが店を始める度に、応援しようと思いつつも、こう考える。「この店、いつまで続くかな…」。結局、行くことのないまま、潰れていった店を何度も見てきたのだった。

 脱サラ飲食店について考える。なぜ、彼らは無謀なチャレンジを続けるのか、と。

 トップ営業マンは、トップ店長になれるのか?

 「人材輩出企業」と呼ばれるリクルート(当時 現リクルートホールディングス)に約20年前に新卒で入った。実際は「排出」も「脱出」も多数なのだが、経営者を中心に著名人を多数輩出していると世間では捉えられているようだ。

 ただ、いかにも起業家養成塾のようで、300人以上の起業のトップに立った人はごくわずかである。意外に多いのは、個人事務所を立ち上げてコンサルタント業をする者、そして、飲食店を立ち上げる者だ。

 たしかに、人材やメディアに関わる企業での経験や得た力は、飲食店経営に活かせる要素はある。これらの経験や能力は店舗のコンセプトやメニューづくり、各種業者との交渉、人材の採用、顧客の集客などには有効だ。

 社内外の人脈があるので、初期段階での動員には苦労しない。店のタイプによっては過去の上司や取引先から、接待利用ニーズを取り込むこともできる。

 飲食店は顧客がついていることで経営は安定する。だから、会社員時代の人脈は馬鹿にできないのである。

 ただ、飲食店の経営はそもそも楽ではない。構造的に厳しい業界だ。資金的にも技術的にも参入しやすいがゆえに、競合は多い。顧客は店を選び放題だ。物件の家賃は上昇している。物価にも左右される。アルバイトの時給は上がっているし(労働者からすると歓迎することではあるが)、人手不足も深刻だ。競争は激しい上、最近はコンビニなどイートインスペースを設け、飲食店のニーズを狙いにきている。チェーン店が台頭する中、個人で経営する店は棲み分けを意識しなくてはならない。

 なんせ、客商売だ。法人営業などと違い、理屈が通らないこともある。モンスター消費者のリスクだってある。

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