人口減は「希望」脱成長社会への転換 京都大学教授に聞く
--「着陸の時代」という比喩は面白いですね
「GDPで本当の豊かさは測れないと言う人は多い。英国のジョン・スチュアート・ミルは著書『経済学原理』(1848年)ですでに、経済はやがて定常状態に達し、そうなって初めて本当の幸せが訪れると論じています」
「当時は農業が経済の中心で、土地の有限性に直面すると考えたのです。その後の工業化でミルの議論は一時忘れられたが、今度は地球資源の有限性にぶつかった」
--資源は無尽蔵ではないのですね
「1929年の世界恐慌で市場経済は一度行き詰まったが、英国のケインズは政府が公共事業を行って低所得層にお金を行き渡らせ、需要を喚起すればいいと唱えた。資本主義は生きながらえたが、いよいよ拡大路線ではない社会のあり方を考える時期に来ています。1972年、民間組織ローマクラブが発表した『成長の限界』は非常に注目されました。2008年の世界的な金融危機、リーマン・ショックは金融資本主義の限界も示しました」
--歴史的な転換点ということですか
「ええ。大きな話になりますが人類史は拡大と定常のサイクルを繰り返してきました。最初は20万年前から5万年前。人類誕生で狩猟採集社会が地球上に広がり、獲物の枯渇などで限界に達し定常期に入った。2回目は1万年前から紀元前5世紀ごろで、農業で生産が拡大したが土壌浸食などで限界を迎えた。3度目のサイクルが17世紀ごろからの工業化で始まり、いま3度目の定常期に入ろうとしているといえる」
「興味深いのは過去2度の定常への移行期、人間の意識に大きな変化が起きていることです。5万年前には洞窟壁画や装飾品など実用性を超えた作品が一気に生まれ、人類学などで『心のビッグバン』と呼ばれています。紀元前5世紀前後には、ユダヤ教や仏教、儒教、ギリシャ哲学などの普遍的な思想が現れた。これは『精神革命』といわれています。いずれも当時の生産の拡大が資源や環境の限界に直面し、物質的な豊かさを超越した高次元の価値観を獲得したのです」