働き方ラボ

クリエイティブ職に就けず失望? 希望外の配属でも仕事を楽しむコツはある

常見陽平
常見陽平

 この作品に私がハマってしまっているのは、自分自身が就活の際に大手広告代理店を志望していたからだった。選考はどんどん進んでいったのだが、急に迷いが生じ、ボロボロの面接になってしまい、落とされた。一応、広い意味ではメディア企業であるリクルート(当時)に入ったのだが、希望外の通信サービスの事業部のしかも営業担当に配属されたのだった。「クリエイティブじゃない」と猛反発し、腐ってしまった。いや、実際は腐る暇もなく、朝から早朝まで働くモーレツ営業に没頭してしまったのだが。

 今思うとかなりの痛い奴だ

 「クリエイティブ」な世界への憧れは強く、『広告批評』(マドラ出版 休刊)などを買いあさり、週末はいかにもクリエイターっぽい格好に身を包んででかけた。電博の社員とは意識的によく会うようにしていた。いつかスカウトされるかもしれないという、今思うと完全に勘違い野郎な妄想を胸に。今思うと、かなりの痛い奴だ。

 その後、自分も年次を重ね、後輩や部下の面倒をみるようになった。やはり同じように「クリエイティブな仕事をしたい」「こんなハズじゃなかった」「自分がいるのはここじゃない」という若者たちと接する機会が増えた。

 一方、私自身は社会人3年目くらいで、すっかりその悩みから抜け出ていた。いかにも「クリエイティブ」だと言われる仕事に就く前に、目の前の仕事をいかに「クリエイティブ」なものにするかを楽しんでいた。いや、いつしか「クリエイティブ」という言葉を使わなくなっていた。なぜなら、全ての仕事は「クリエイティブ」だと思うようになったからだ。この言葉の呪縛から逃れた瞬間、私はやっと社会人になれた気がした。

 リクルーターとして、人事担当者として、大学教員として就活生と接してきたが、この「クリエイティブ」という言葉は、まさに『左利きのエレン』の主人公、デザイナー朝倉光一のような「何者」かになりたい若者が連呼する言葉だと気づいた。要するに普通のサラリーマンや、中でも営業マンにはなりたくないタイプの人たちだ。

 しかし、この手の人たちもいざ本人たちが言う「クリエイティブ」な仕事に就いたときに悩むことだろう。所詮、ビジネスの世界での「クリエイティブ」な仕事、たとえば何らかのかたちで企画や制作に関わる仕事は、諸々の制約のもとで働かなくてはならないからだ。

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