社長を目指す方程式

営業、転職… 年末追い込み、3つのズルいクロージングテクニック

井上和幸
井上和幸

 サブスク型サービスを申し込む際に気をつけるべきこと

 最近はサブスクリプションモデルへのサービス移行が花盛り。それには提供される商品やサービスが「パッケージ」から「オンライン」に移行したこととも大きく関係しているでしょう。売り切り、買い切り型の販売ではなく、継続課金型のサービスへ。

 この時代の流れにマッチしているのが、「ローボール」テクニックです(いきなり投げたら捕球できないような「高いボール(high ball)」であっても「低いボール(low ball)」から徐々に高さを上げていけば捕球しやすくなる、ということに由来)。

 あなたもおそらくここ最近、こんなプランのオファーを受けたことでしょう。「まず無料プランをお試しください。」「初回、無料!」「初月1カ月、無料!」。あるいはこうしたサービスの販売をされていらっしゃるかもしれません。

 動画配信、コスメやサプリ、あるいは使い放題・借り放題サービスなど。「あ、いいな、これ」と思うと、その案内に、上記の「まず無料プラン」「初回無料」「初月無料」の文字が。おお、であれば試してみよう。で、申し込みを始めると、「それには半年のお申し込みが条件です」「クレジットカードを登録ください」。ここで、なんだ、じゃあやめよう、という人もいるとは思いますが、実際はかなりの割合で「え、そうなの?」と思いつつ、そのまま、まあいいか、使ってみて嫌なら解約すればいいし、とそのまま契約登録に向かいます。

 相手がYESと飛びつく提案を先に受けさせてしまい、その後条件を釣り上げる「ローボール」テクニック。嫌な言い方をすれば、はじめに相手が承諾しやすい好条件を出しておいて、後から徐々に相手にとって不利な条件を突きつける手法です。

 これが“強い”のは、私たちには「一貫性の原理」があるからです。一度自分が選んだ選択は、そのまま変えずに進みたいという心理を私たちは持っています。また、自分の選択は正しいと思いたい「認知的不協和」、一度選択したものを捨てるのは時間のロスになるという「コンコルド効果」「サンクコスト効果」も働きます。

 売り手の立場としては、なるべくお客様の意思決定をスムーズに促進したいため、これらの人間心理に乗っ取った営業プロセス、マーケティングプロセスを取ることが大事だと言えますね。

 これら3つの心理学理論は、おそらく皆さん、お気付きの通り、背中を押してあげるという意味では非常に良いテクニックですが、やり過ぎは禁物。相手が「騙された」ということにもなりかねないので、くれぐれも悪用厳禁でお願いいたします!

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井上和幸(いのうえ・かずゆき)
井上和幸(いのうえ・かずゆき) 株式会社経営者JP代表取締役社長・CEO
1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。
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【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら

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