翻ってみると、欧州は敷居を高くすることでブランドを作ってきた。ユニバーサル文化の源流が欧州にあるとすることで、長い間、主導権を握ってきたのである。
米国の先端的なビジネスパーソンと言われる人たちも、欧州文化を相変わらず指標にしていることが多い。
冒頭のセリフは、欧州文化の戦略にまんまと引っかかっているのだ。しかし、その欧州がとうとう精神的だけでなく物理的な行き詰まりにきている。
ぼくが今年読んで深く心に残っている二冊の本がある。ダグラス・マレー『西洋の自死-移民・アイデンティティ・イスラム』とナディア・ムラド『THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』である。
前者は多文化への寛容を旗印としてきた欧州が移民や難民の対応に苦しむ姿が、後者ではイスラム国による目を覆いたくなるようなイラクの迫害の現実があり、「安全圏」の欧州に逃げ出す動機と故郷の風景に惹きつけられてやまない心のありようが描かれている。欧州はいわばサンドイッチ状況に嵌っている。
それにも関わらず、EUが世界のルールメーカーであることで実力を今も発揮し、欧州文化を欧州以外の地域で稼ぐビジネス、即ちラグジュアリー市場のリーダーとして存在感を放っている。
これらの状況を理解して動く知力そのものが問われている。社交術としての教養が必要だとか、呑気なことを言っている場合ではないのだ。
今回が今年最後のコラムです。今年もおつきあい、ありがとうございました。良い年をお迎えください。
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。