ただ、現状の社会通念と照らし合わせて明らかに不適切な発言も散見される。「麻生太郎だからしょうがない」ですませてはいけない。もっとも、読者の皆さんが困るのは、職場の「麻生太郎」ではないだろうか。つまり、明らかにコンプライアンスについて無頓着な中高年の経営者、管理職たちである。「制御不能」な人たちがいる。しかも、こういう人たちがコンプライアンスを統括する立場にいるからたちが悪い。このように職場の「麻生太郎」が上にいては、コンプライアンスなど浸透しない。これは、職場の雰囲気を悪くするし、取引先からの信頼低下にもつながる。
コンプライアンスはデータ・ファクトで勝負
自分自身が失言や不謹慎な言動をしないように、また上司・同僚・部下にそのようなことがないようにするには、どうすればいいか。ポイントは「情報収集・共有」につきる。勉強が必要だとも言える。
失言の原因は、要するに相手に対しての配慮がないからである。社内外の周りにいる人のことをよく知る。相手がどう思うかを考える。特に、相手にとって不愉快に思うことは何かということを常に意識するべきだ。
ここで、確認しておくべきことは、「昔はこれくらい普通だった」という話はいったんおいておいて、「今どき、何が不愉快とされるのか」ということを意識しておくということだ。プライベートに過度に介入した質問はNGだ。本人の努力でどうにもならないことについて触れたり、否定するのもNGである。相手についても、社会常識についても学び続けなくてはならない。
一方、困るのは、上司・同僚・部下に何が失言、不謹慎な言動にあたるのかを浸透させることだろう。同僚、部下にはその都度指摘しやすいが、上司には難しい。コツとしては、企業での不祥事報道があるたびに、周りにさりげなくインプットすることである。「そんなこと、うるさく言うのはどうなのか」という反応があるかもしれないが、少なくとも今、社会では何が不謹慎とされているのかをインプットするべきだ。「不謹慎狩り」と言う人がいるかもしれないが、みんなが気持ちよく働くためのポイントである。何が不謹慎とされるのかを理解しておこう。
【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら