「誰も取り組んでいないことに挑戦し続ける。それもみんなで」
そして、いまのAWSに入られることになりますよね。どのような流れだったのですか?
「はい。実はミスミを辞めた時には転職先を見つけていなかったです(笑)。自分の性格的に就職しながら転職活動は出来ないなと」
いかにも畑さんぽいですね。潔いサムライのような性格。
「というよりも、焦って意思決定したくなかったのです。それとこれまで全力で取り組んできた経験があるので、“なんとかなるだろう”という楽観的な思いもありました。そこで冷静にIT市場を見渡してみると、当時2013年だったのですがクラウドが伸びてきていました。なかでもAWSが伸びていたのです」
ということは…
「はい。AWSに連絡をしました(笑)。そこにはIBMの新卒同期が3人働いていたのです。入社するためには選ばれる身ではありますが、私も同じく選ぶ立場です。そこで元同期にAWS社内の雰囲気などを確認したところ、私の気性とマッチしていると感じました」
さすが、冷静に意思決定をなされたのですね。しかし自分にマッチしているだけでは入社できませんよね
「そうですね。AWS側のニーズとしてはスタートアップにAWSのサービスを普及させていきたいというビジョンがありました。そうなると、私のスタートアップでの経験やSEであったこと、そして新規事業の立ち上げにも取り組んでいたことなどがバチッとハマるわけです。当時、クラウドの波に乗るのはちょっと遅いかなっと思ったのですが、間に合ってよかったです」
美しいですね、いままでの集大成と感じます。その後どのようなことに取り組まれたのですか?
「スタートアップにAWSのサービスを普及させるということは、AWSを通じてスタートアップを支援するということと同義です。そこでAWSらしい新しいことに取り組んでいきました」
もう少し教えてください。
「はい。大小様々なことに取り組んでいくことになるのですが、技術者に寄り添う施策を打っていきました。例えば、TechCrunchというIT業界媒体とともにその年の技術者を称賛するイベントである“CTO of the year”を開催したり、IVSというスタートアップの祭典で“CTO Night and Day”を開催し、世の中のCTO(チーフ・テクニカル・オフィサー、最高技術責任者)にスポットライトをあてる活動を開始しました」
そしていま取材させていただいている、この場所『AWS Loft Tokyo』も開設されたわけですね。
「はい。AWS Loftはもともと米国サンフランシスコとニューヨークにありました。私はチームメンバーとともに日本でAWS Loftが開設できるように働きかけていきました。いままでの日本の中でのスタートアップ支援活動や様々な企業、スタートアップがAWSをご利用して下さっているという状況を踏まえて、グローバルで3番目に開設させることができました。ここは技術者が無料で使えるコワーキングスペースであり、AWSのエンジニアが常駐しているのでいつでも質問ができます」
技術者にとってパラダイスですね!
「日本はユニコーン(評価額10億ドル以上の非上場、設立10年以内のベンチャー企業)が少なく、その理由の一つにスタートアップで働く技術者や、エンジニア起業家不足が挙げられます。私はそれらの方々を増やし、結果として技術に尖ったユニコーンが生まれて欲しいと思っており、AWSを通じてその土壌を作っていきたいと思っているのです。そのわかりやすい事例が『AWS Loft Tokyo』です」
最後にSankeiBiz読者の方にメッセージをお願いいたします。
「振り返ると、私は関わる人が喜ぶこと・自分が属する会社のミッション・自分のやりたいことの3つを重ねて心を砕いて活動してきたように思います。最初は自分がやりたいと真に言えるものは見つけられていなかったのですが、その時その場やりきることでインプットを増やし、俯瞰してやるべきことを見つけられるようになり、ワクワク感とともに実行し、徐々に自分をアップデートしてきました。その時の経験が、後の何に活きるかはその時は分からないですが、だからこそ、ご自身がやりたい、ワクワクを感じるテーマにその時その場、全力で向き合うことが次のご自身につながっていくことなのではないでしょうか」
畑さんありがとうございました。
【ビジネスパーソン大航海時代】は小原聖誉さんが多様な働き方が選択できる「大航海時代」に生きるビジネスパーソンを応援する連載コラムです。更新は原則第3水曜日。アーカイブはこちら