さて、鴻海はシャープをどのようにしていくのでしょうか。「シャープ」というロゴのついた製品は残るのでしょうか? まだ過渡期にあります。しかし、テレビCMで有名になった綺麗な液晶を作る亀山工場はいま、iPhoneの画面を製造しています。シャープの強み(=コアコンピタンス)は技術力であり、売れる商品の企画・開発力ではないという親会社の判断でしょう。
富士フイルムやIBMが成功した「ビポット」
コアコンピタンス、つまり差別化できる能力に集中していくのに似た戦略として「ピボット=Pivot」と呼ばれるものがあります。これは、軸となる能力が活きる別の分野へと変更していく戦略です。
有名な事例は、富士フイルムが進出した化粧品分野がありますね。写真用フィルムの主な成分はコラーゲンです。その知見を多分野へと応用し大成功しています。花王も界面活性制御技術という洗剤などで使う技術を軸にして、フロッピーディスク製造へ進出してトップシェアを取りました。
IBMは2000年代に入って、パソコン本体やハードディスクなどの製造資産をすべて売却し、代わりにソフト・サービスを主力としていきました。コンサルティング会社を買収するなど、コンピュータの運用能力を軸(=コアコンピタンス)としてサービス業へと業務転換(=ピボット)していったのです。
ビジネスパーソンのキャリア形成にも通じる
自分の中の強み(=コアコンピタンス)を考えて鍛え、それが活きるような協業や別分野を考える戦略。この考え方はぜひ、ビジネスパーソン個人の成長戦略として活かしてもらいたいものです。
コアの力とは、抽象化されていて違う業界や商材でも応用が効くような力です。たとえば「高級車の営業マンの能力」が「高級車を販売する力」としか考えられなければ、別の高級車ディーラーでしか活躍できないでしょう。しかし、富裕層とコミュニケーションをとりながら、利益幅の大きい商材を契約まで持ち込む力と抽象化できていれば他業種での活躍も見えてくるのです。つまりピボットが可能ということですね。
様々な分野で活躍し続ける方は、コアとなる能力を磨きつつ、新しい分野特有の知識や能力を合わせることで能力を発揮しています。特に若手のビジネスパーソンにとっては転職だったり、異動だったり様々な場面で必要となり、活用できる能力です。
みなさんの扱っている商品や分野がこの先ずっと存在する可能性は低いでしょう。コアを鍛えつつ、応用先に関してつねにアンテナを張っておきたいですね。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら