他方、このセリフは一度として価値観として捨てるべき対象になったことはなかったはずだ。競争社会を生きづらくするから、とりあえず意見表明する優先順位を下げておこうと思う人が多かったに過ぎない。そっとポケットにしまい込んでいたような感じだろうか。
したがって、競争ロジックに乗りすぎると地球環境から日常生活の心持ちまでも含め「もう、いい加減やってられない」と感じ、あらゆることを大幅に見直そうと思った時、「我々の幸せって、どこにあるんだっけ?」と問うたのである。
そして、「経済的動機だけで、ぼくたちは活動しているわけじゃないよね? 仲間と一緒に何かやって遂げられたとき、嬉しいじゃない。あの感覚が幸せなんだよ」と確信を持ち始めたのである。そこからスタートしないと地球にも迷惑がかかると自覚し始めた。
ある意味、変わってはいけない価値観が、他の価値観が群居するなかで埋没気味であったところ、再びスポットを浴びるに相応しいと考える人が戻ってきた。それもノスタルジックな価値観としてではなく、あらたにつくり直すことも辞さない覚悟である。長い間、人に顧みられることがなく荒廃しきった自然にまた手を入れるようなものだ。
こういう例を考えながら、価値や考え方を「消去させる」のではなく「一時保存」の状態にしておくにはどうすればいいのか、とぼくは思いを馳せる。アーカイブへの期待である。
PCのメタファーなど使いたくないのだが…。
『日々の政治 ソーシャルイノベーションをもたらすデザイン文化』 エツィオ・マンズィーニ 著、安西洋之・八重樫文 訳
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。