経営者やリーダーが他者に共感を示す様子を注意深く観察すると、次の3種類が浮かび上がってくるとコールマン氏は紹介します。
・認知的共感:他者の視点を理解する力
・情緒的共感:他者の感情を酌み取る力
・共感的関心:相手が自分に何を求めているかを察知する力
これらの共感や関心を常に無意識的にも働かせ続けている人とは一緒にいたい、相談したい、ついていきたいと思います。いわゆる社会的感受性の高い人です。逆に社会的感受性に欠ける人は、周囲から見てすぐ分かりますが、感情に任せて激高、威嚇、逆恨みや責任逃れをします。これを悲しいことに、本人は気がついていないのです。
優れた社長やリーダーは、他者への前向きな関心を集中させることに優れていると述べましたが、一方でこの集中力は、大きな権限を得るにつれて衰えていく人が多いそうです。自分軸で動ける状況が他者への関心を失わせエゴイスティックになっていくわけです。これは重々、気をつけたいですね。
「外界への集中」はイノベーションをもたらす
最後に「外界への集中」です。
外界への関心が強いリーダーは、聞き上手であるばかりか質問上手です。ある場所での判断が、遠く離れた場所や分野に及ぼす影響を察知したり、現在の選択が先々どのような結果をもたらすかを想像したりすることができます。
ここで私が想起するのは、最近よく言われる「両利きの経営」です。その基本コンセプトは「まるで右手と左手が上手に使える人のように、『知の探索(Exploration)』と『知の深化(Exploitation)』について高い次元でバランスを取る経営」を指します。
「知の深化」は特定分野の知を継続的に深掘りすることで、「知の探索」は常に知の範囲を広げることで「知と知の組み合せ」を起こしイノベーションを実現することです。この「知の深化」と「知の探索」を両利きで扱えることが、これからの経営者や事業リーダーに求められます。そのために発揮すべきが、外界に関心を集中することです。
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集中力のあるリーダーとは、自分の注意力全てを思いのままに操れる人です。自分の内なる感情に耳を傾け、衝動を抑え、他人が自分に何を求めているかを理解し、先入観を排して自由に幅広く関心を持ちます。
煉獄杏寿郎は無限列車編の中で、「全集中・常中」ができるようになれば様々なことができるようになると炭治郎に指南します。
「なんでもできるわけではないが、昨日の自分より確実に強い自分になれる」(『鬼滅の刃』集英社ジャンプコミックス第8巻より)
3つの集中を高めることでEQが高まります。EQは「自分自身を知る力」「自分を他に伝える力」「他を知り受け入れる力」の3つからなります。(*EQについて詳しく知りたい方は、当連載のバックナンバー「2019年は「EQマネジメント」が来る! “感情知性”をコントロールしよう」をご覧ください。)
上司の皆さんもぜひ、「全集中」でEQ力の高いリーダーシップを発揮いただければと願います。
【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら