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イタリアの歯医者は命がけ? 日伊「自己表現」考

安西洋之
安西洋之

 日本の人は自己表現が下手との自己反省が多い。しかし、これは上手いとか下手とかの優劣の問題だろうか? もしかしたら、もっと別の側面が隠れているのではないかと思うこともある。

 ぼくも奥さんもかかりつけの歯医者は日本にある。それぞれ別のところだが、イタリアで住み始める前から付き合いのある歯医者だ。歯医者以外はイタリアの病院に世話になっている。

 イタリアの歯医者は健康保険がきかないのもあるが、歯をいじられるのは長い間の付き合いのある人にお願いしたい。しかし、それでもトラブルが起こることはあるから、その時はイタリアの歯医者に出かける。

 たまたま、今週、奥さんが「歯が痛い」と言い出し歯医者にかけこんだ。そしたら、その場で「これはインプラントするしかない!」と診療台で言われた。口を開けたまま、痛いところで「治療はそれしかない」と言われれば、「ちょっと考えてみる」とは答えられない。

 それで治療が終わったところで、歯医者と衛生士の2人から「すごい! なんと立派な患者なのだ!」と奥さんは褒められた。「えっ?」ときょとんとした彼女に対して、2人は「よく我慢した。他の患者はもっと大声で叫んだり、人によっては口に入れた私たちの手に噛みつく」と説明する。

 奥さんが「まあ、子どもならよくあることでは…」と言うと、「いや、いや、大人の患者が噛みつくんだよ」と。

 歯医者も命がけじゃないか。とにかく、そう珍しい話ではないようだ。

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