要求されるサービスの質も変わってきますので、従業員の教育・採用に関する新しいコストも発生するのです。
「無料ダイヤモンド」に群がる群衆
2009年にフランスの超高級宝飾品ブランドの「MAUBOUSSIN(モーブッサン)」が銀座店で「先着5000人の来店客にダイヤモンドを無料でプレゼント」という企画を行いました。0.1カラットのダイヤモンドの裸石の配布は、同ブランドの認知力向上、新規顧客獲得が狙いでしたが、ふたを開けてみると、2kmに渡る行列、割り込み多発による大げんか、ギリギリもらえなかった人たちの怒号など現場は悲惨な状況でした。
その様子がテレビのワイドショーで拡散されます。無料ダイヤに群がる層とその対応、そして既存優良顧客の離脱とのバランスとしては非常に危険な「値下げ(というか無料)による集客」と言わざるを得ません。およそ「憧れ」とは程遠い人たちに囲まれながらモーブッサンの入り口を初めてくぐった人たちは、より高く、利益の出る商品へとステップアップしていく可能性は低いと思います。
値下げしたドコモを待ち受けるもの
NTTドコモも同じような感覚を持っているはずです。現在、docomoブランドという「高い利益率」で契約している層は、「なんとなく安心」に大きなお金を払っている優良顧客と言えます。対面サービスや電話での対応なども一度も使ったことがない方も多いはずです。そこに「値下げ」をするとどうなるでしょうか。
- 既存顧客からの利益は減少する
- 薄利の新規顧客へ値下げ前と同様のサービスを用意する
というダブルパンチのコストが発生してしまいます。
ですから、「低価格」で集客できる層は「低サービス・低料金」のサブブランドへと流し込みたいのです。そこでNTTドコモは、ahamoプランの申し込みを「オンラインのみ」としました。契約後の手続き・相談などもすべてWebサイトや専用アプリで対応します。受付拠点や提供サービスを絞り込んで効率化させることでコストがかさむのを回避しようとしています。もっとも、NTTドコモはahamoをサブブランドとして用意していたわけですから、これらの効率化は同社にとって規定路線だったはずですが…。
携帯電話業界に限らずたいていの業界では、「いままでの商品をより低価格で」という値下げ戦略は中長期的には体力的に厳しいことを理解しておかなければ、優良顧客は逃げ、体力も奪われて最後に何も残らないという末路になってしまうのです。残念ながら、セール中が一番クレームが多くなるのです。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら