洗濯機の機能は世界で一律に優劣を比較する基準がない。洗浄力からして、どこまで清潔にするか、どこまで生地の傷みを許容するかを勘案するだけでなく、そもそも大人の場合、子どものように泥んこになって遊ぶわけではない。多くの場合は汗による汚れであり、洗浄力の威力がどこまで必要かとの判断も「清潔に関する先入観」に左右される要素が大きい。だが、ここに微妙な変化がでてきている。
斉藤さんは「パンデミックの影響で外出が減り、同時に汚れや汗のための洗濯回数も減っています。しかし、菌・ウィルスに対して清潔でいたいとの価値観が急速に強くなっています。そのために外から帰ってきたら軽く洗う、という生活習慣も急速に増えているようです。外が汚く汚染されている感覚を持っていた中国では強かった価値観ですが、最近は世界中でそんな声を聴くようになりました」と話す。
「抗菌」という概念がまったく通じなかった欧州でも、今やその言葉の意味を説明する必要はないと言う。
こうしてみると、ローカル回帰とでもいうべき今、だからといって各地域の洗濯文化に基づいた洗濯機を使うべきという声が強くなっているわけでもない。どちらかといえば、要求の種類は似通ってきているとも見える。
グローバリゼーションとローカリゼーションの綱引きの結果は、実のところ機能や要望など各要素の点取り競争の様相をみせるのではなく、お互いが捩じりあいながらある一定の年数を経て、オセロゲームのように突如として浮上するところがある。戦略としては比較的大雑把な幅で推進するしかない。
斉藤さんの話を聞きながら、ぼんやりとそんなことを思った。
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。